実臨床における重度の薬剤誘発性急性肝障害の発現率に関するデータは少ない。そこで、米国・ペンシルベニア大学のJessie Torgersen氏らの研究チームは、肝毒性が疑われる194種類の薬剤について、重度の急性肝障害の発現率を調査した。その結果、1万人年当たり10件以上の重度の急性肝障害が認められた薬剤は7種類であった。また、重度の急性肝障害の発現率が高い薬剤には、抗菌薬が多かった。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年6月24日号で報告された。
研究チームは、米国退役軍人のデータを用いて後ろ向きコホート研究を実施した。本研究には、2000年10月1日~2021年9月30日の期間のデータを用いた。対象は、肝臓疾患や胆道疾患の既往歴がない患者789万9,888例とした。外来で処方される薬剤のうち、過去に薬剤誘発性肝障害が報告されている194種類について、1万人年当たりの重度の急性肝障害の発現率を調査した。主要評価項目は、薬物治療開始後に発現した入院を要する重度の急性肝障害の発現率とした。
主な結果は以下のとおり。
・重度の急性肝障害が1万人年当たり10件以上発現した薬剤は7種類であった。薬剤の種類および1万人年当たりの発現率(95%信頼区間[CI])は以下のとおり。
スタブジン(販売中止):86.4件(27.7~269.7)
エルロチニブ:19.7件(7.4~53.0)
レナリドミド:13.7件(6.4~28.9)
クロルプロマジン:12.0件(4.5~32.3)
メトロニダゾール:11.8件(7.4~18.7)
プロクロルペラジン:11.6件(7.4~18.2)
イソニアジド:10.5件(5.8~19.2)
・重度の急性肝障害が1万人年当たり5.0~9.9件以上発現した薬剤は10種類であった。薬剤の種類および1万人年当たりの発現率(95%CI)は以下のとおり。
モキシフロキサシン:9.3件(5.6~15.4)
アザチオプリン:7.7件(3.7~16.4)
レボフロキサシン:7.2件(4.6~11.1)
クラリスロマイシン:6.7件(3.3~13.5)
ケトコナゾール:6.1件(2.0~19.0)
フルコナゾール:6.0件(3.4~10.4)
カプトプリル:5.8件(2.7~12.2)
アモキシシリン・クラブラン酸:5.4件(3.7~7.9)
スルファメトキサゾール:5.1件(3.5~7.3)
シプロフロキサシン:5.1件(3.5~7.4)
・以上の17種類のうち11種類は、既存のケースレポートに基づく急性肝障害の発現リスク分類において、最上位に含まれていない薬剤であった。
・17種類のうち11種類を抗菌薬・抗レトロウイルス薬が占めた。
(ケアネット 佐藤 亮)