スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/17

 

 スパイロメトリーなどを用いた呼吸機能検査は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の管理に不可欠な検査である。しかし、高齢者や小児などでは正確な評価が困難な場合がある。また、新型コロナウイルス感染症流行時には、感染リスクを考慮して実施が控えられるなど、実施が制限される場合もある。そこで、植田 大樹氏(大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学 准教授)らの研究グループは、14万枚超の胸部X線画像をAIモデルの訓練・検証に使用して、胸部X線画像から呼吸機能を推定するAIモデルを開発した。その結果、本AIモデルによる呼吸機能の推定値は、実際の呼吸機能検査の測定値と非常に高い一致率を示した。本研究結果は、Lancet Digital Health誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。

 本研究では、2003~21年の期間に収集した胸部X線画像14万1,734枚を用いて、3施設でAIモデルの訓練・内部検証を実施し、2施設で外部検証を実施した。外部検証では、努力性肺活量(FVC)と1秒量(FEV1)について、AIモデルの推定値とスパイロメトリーによる呼吸機能検査の実測値を比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・外部検証の2施設におけるFVCについて、AIモデルによる推定値と実測値には強い相関があり(それぞれr=0.91、0.90)、誤差は小さかった(いずれの施設も平均絶対誤差[MAE]=0.31L)。
・同様に、FEV1についても推定値と実測値には強い相関があり(いずれの施設もr=0.91)、誤差は小さかった(それぞれMAE=0.28L、0.25L)。
・予測値に対するFVC(%FVC)80%未満、予測値に対するFEV1(%FEV1)80%未満、1秒率(FEV1/FVC)70%未満についても、AIモデルは高い予測能を示した。それぞれに関する2施設のROC曲線のAUCは以下のとおり。
 %FVC 80%未満:それぞれ0.88、0.85
 %FEV1 80%未満:いずれの施設も0.87
 FEV1/FVC 70%未満:それぞれ0.83、0.87

 著者らは、本研究結果について「本研究で開発したAIモデルは、胸部X線画像から呼吸機能を高精度に推定できる可能性を世界で初めて示した。本AIモデルは、呼吸機能検査の実施が困難な患者に対し、呼吸機能評価の選択肢を増やすことが期待される。今後は、異なる集団や環境下での性能を確認するとともに、実際の診療で使用した際の効果や影響を慎重に見極めていく必要がある」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)