脳転移を有するHER2低発現乳がん、T-DXdの頭蓋内奏効率は?(DESTINY-Breast04)/日本乳癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/07/25

 

 化学療法歴を有するHER2低発現の切除不能または転移を有する乳がん患者を対象として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択による化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast04試験の、脳転移を有する患者に絞った探索的研究において、T-DXd群ではTPC群を上回る良好な頭蓋内奏効が得られたことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第32回日本乳癌学会学術総会のアンコール企画で発表した。

 脳転移は、HER2低発現の転移・再発乳がん患者の約15%に生じる可能性があり、予後不良であることが報告されている。これまでのDESTINY-Breast04試験のサブグループ解析では、脳転移を有する症例であっても、T-DXd群は全体集団と同様に有意に無増悪生存期間(PFS)が延長したことが報告されているが、頭蓋内転移に対する有効性は不明であった。そこで研究グループは、DESTINY-Breast04試験のうち、ベースライン時に無症候性脳転移を認めた症例におけるT-DXdおよびTPCの頭蓋内病変に対する有効性を、脳MRIまたはCTの盲検下独立中央判定(BICR)に基づき評価した(データカットオフ:2022年1月11日)。

 評価項目は、BICR判定による頭蓋内確定奏効率(cORR)(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、頭蓋内最良総合効果、頭蓋内臨床的有用率(CBR)(CR+PR+安定[SD])、病勢コントロール率(DCR)(CR+PR+SD)、BICR判定による中枢神経系PFS(CNS-PFS)、全生存期間(OS)であった。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時に無症候性脳転移を認めたのは35例で、T-DXd群が24例(うち未治療が8例)、TPC群が11例(同7例)であった。T-DXd群では、年齢中央値が高く、CDK4/6阻害薬の治療歴がない割合が高く、脳転移に対する治療として放射線療法(±外科治療)を受けていた割合が高かった。
・頭蓋内cORRは、T-DXd群25.0%、TPC群0%であった。T-DXd群では、16.7%でCRが得られた。
・T-DXd群およびTPC群の頭蓋内CBRは58.3%/18.2%、頭蓋内DCRは75.0%/63.6%であった。
・頭蓋内最良総合効果のSwimmer Plotでは、奏効している患者はT-DXd群のほうが長い傾向を示した。
・T-DXd群におけるCNS-PFS中央値は9.7ヵ月、OS中央値は16.7ヵ月であった。
・最初の増悪部位別では、頭蓋内で進行(PD)と判定されたのはT-DXd群8.3%、TPC群27.3%であった。

 鶴谷氏は「本探索的研究は部分集団解析であり、前治療歴などは両群で差があったことを加味する必要がある」としたうえで、「組み入れられた患者はごく少数であったが、頭蓋内の有効性データから、TPCを上回るT-DXdの有益性が示された」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)