ワルファリン時代vs.DOAC時代、日本の実臨床でのVTE長期転帰

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/28

 

 静脈血栓塞栓症(VTE)に対し、実臨床で直接経口抗凝固薬(DOAC)が使用されるようになって以降、ワルファリン時代と比較した長期転帰には実際どのような変化があるのだろうか。京都大学の金田 和久氏らは、急性の症候性VTE患者を対象とした多施設共同観察研究COMMAND VTE Registryから、ワルファリン時代とDOAC時代のデータを比較し、結果をJournal of the American College of Cardiology誌2024年8月6日号に報告した。

 本研究では、COMMAND VTE Registryから、ワルファリン時代(2010~14年)の連続3,027症例(29施設)を登録したレジストリ1と、DOAC時代(2015~20年)の連続5,197症例(31施設)を登録したレジストリ2のデータが用いられた。

 主な結果は以下のとおり。

・DOACの使用率はレジストリ1:2.6% vs.レジストリ2:79%であった(p<0.001)。
・レジストリ2における5年間のVTE累積再発率はレジストリ1よりも有意に低く(10.5% vs.9.5%、p=0.02)、そのリスク低下は交絡因子による調整後も有意であった(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65〜0.93、p=0.005)。
・2つのレジストリ間で5年間の大出血累積発生率に有意差は認められなかった(12.1% vs.13.7%、p=0.26)。交絡因子による調整後も、大出血リスクに有意差は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.89~1.21、p=0.63)。

 著者らは、ワルファリンからDOACへの移行に伴い、VTEの再発リスクが低下した一方、大出血リスクに明らかな変化はなく、DOAC時代でも依然として満たされていないニーズとなっている可能性があると考察している。

(ケアネット 遊佐 なつみ)