早期アルツハイマー病治療薬「ケサンラ点滴静注液」承認/リリー

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/26

 

 日本イーライリリーは9月24日付のプレスリリースにて、同日に厚生労働省より、早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ(R)点滴静注液350mg」(一般名:ドナネマブ)について、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能又は効果として、日本における製造販売承認を取得したことを発表した。

 ケサンラは、アミロイドβプラークを標的とする早期AD治療薬だ。既承認のエーザイのAD治療薬「レケンビ点滴静注」(一般名:レカネマブ)に続く抗アミロイドβ抗体薬で、国内2製品目となる1)。4週間隔で、少なくとも30分以上かけて点滴静注することにより、脳内に過剰に蓄積したアミロイドβプラークを除去する。本剤は、アミロイドPET検査によりアミロイドβプラークの除去が確認された時点で投与を完了する(アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了する)。本剤の投与完了により、当事者および介護者の身体的、精神的な負担を軽減することが期待される。

 本剤は、8ヵ国の1,736例が参加した第III相二重盲検プラセボ対照試験「TRAILBLAZER-ALZ 2試験」2)の結果に基づいて承認された。本試験では、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認された60~85歳の早期AD患者を対象に、参加者を無作為に2群に分け、一方にはケサンラを(860例)、もう一方にはプラセボを(876例)、4週間隔で72週間静脈内投与し、安全性および有効性を評価した。参加者は、アミロイドβプラークがアミロイドPET検査の視覚読影で陰性と判定される最も低いレベルまで除去されたことが確認された場合、ケサンラの投与を完了し、残りの試験期間をプラセボ投与に切り替えた。

 本試験の主な結果は以下のとおり。

・早期ADの中でもより早い段階にある参加者1,182例(脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度、MMSEスコア平均値約23)と、より進行した段階にあることを示す脳内タウ蓄積レベルが高度の参加者を含む参加者全体(MMSEスコア平均値約22)を、ケサンラ群とプラセボ群に分けて解析した結果、両集団ともにケサンラ群において、臨床症状の悪化が有意に抑えられた。
・脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者のうち、ケサンラ群では、認知機能と日常生活機能を総合的に評価する統合AD評価尺度(iADRS)において、プラセボ群と比較して35%の有意な進行抑制が認められた。
・高度のタウ蓄積を有する患者を含めた参加者全体においても、ケサンラ群のiADRSでは、プラセボ群と比較して22%の有意な臨床的進行抑制が認められた。
・タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者では、ケサンラ群においてプラセボ群と比較して、次の臨床病期に進行するリスクが39%低下した。
・本試験に参加した日本人集団でも、参加者全体と同様の結果が確認された。
・ケサンラ群において、アミロイドβプラークが試験開始時と比較して6ヵ月で平均61%、12ヵ月で平均80%、18ヵ月で平均84%減少した。
・試験開始から12ヵ月後、ケサンラ群の66%において、アミロイドPET検査の視覚読影で陰性に相当するアミロイドβプラークの除去が確認された。
・アミロイドβを標的とする治療に共通する副作用であるアミロイド関連画像異常(ARIA)のうち、ARIA-Eがケサンラ群の24.0%に発現し、症候性のARIA-Eがケサンラ群の6.1%に発現した。Infusion reactionは、ケサンラ群の8.3%に発現した。

【製品概要】
商品名:ケサンラ(R)点滴静注液350mg
一般名:ドナネマブ
効能又は効果:アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制
用法及び用量:通常、成人にはドナネマブ(遺伝子組換え)として1回700mgを4週間隔で3回、その後は1回1,400mgを4週間隔で、少なくとも30分かけて点滴静注する。
用法及び用量に関連する注意(添付文書から一部抜粋):本剤投与中にアミロイドβプラークの除去が確認された場合は、その時点で本剤の投与を完了すること。アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、本剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了すること。

【副作用について】
ARIAは、多くは無症状のため、定期的な核磁気共鳴画像(MRI)検査によって検出する。発生した場合は、脳の一部または複数の領域の一時的な浮腫として発現することがあるが、通常は時間の経過とともに消失する。脳の表面や脳内の小さな出血として認められることもあり、より広範囲な脳の領域で出血が起こることもある。ARIAは、まれに重篤となり、生命を脅かす事象となる可能性もある。
本剤の投与により、アナフィラキシーを含むinfusion reactionsを起こす可能性があり、中には重篤で生命を脅かすこともある。これらが起こる場合は通常、投与中または投与後30分以内に発現する。副作用の1つとして、頭痛も多く報告されている。

(ケアネット 古賀 公子)