末梢動脈疾患でがんリスク増、とくに注意すべき患者は?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/10/02

 

 下肢末梢動脈疾患(PAD)に関連したがんリスクの増加が報告されているが、喫煙などの重要な交絡因子が考慮されておらず、追跡期間も10年未満と短い。今回、米国・ジョンズ・ホプキンス大学/久留米大学の野原 正一郎氏らは、ARIC(atherosclerosis risk in communities)研究の参加者を対象に、長期にわたってPADとがん発症の独立した関連を検討した。その結果、症候性PAD・無症候性PADとも交絡因子調整後もがんリスクと有意に関連し、とくに喫煙経験者ではがんリスクが1.4倍、肺がんリスクは2倍以上だった。International Journal of Cardiology誌オンライン版2024年9月19日号に掲載。

 本試験では、ARIC研究の参加者のうち、ベースライン時にがんではなかった1万3,106例(平均年齢:54.0歳、男性:45.7%、黒人:26.1%)を、症候性PAD(臨床歴もしくは間欠性跛行)、無症候性PAD(足関節上腕血圧比[ABI]≦0.9)、ABIによる5つのカテゴリー(0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3<)に分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中央値25.3年の間に4,143例でがんを発症した。
・25年間の累積がん発症率は症候性PADで37.2%、無症候性PADで32.3%、その他のカテゴリーで28.0~31.0%であった。
・症候性PAD(ハザード比[HR]:1.42、95%信頼区間[CI]:1.05~1.92)および無症候性PAD(HR:1.24、95%CI:1.05~1.46)は、喫煙や糖尿病などの潜在的交絡因子調整後も、がんリスクと有意に関連していた。
・喫煙の有無別にみると、喫煙経験者ではPAD(症候性および無症候性)はPADなしに比べてがんリスクと強い関連(HR:1.42、95%CI:1.21~1.67)がみられた一方、喫煙未経験者ではみられなかった。この結果は肺がんにおいて最も顕著であった(HR:2.16、95%CI:1.65~2.83)。

 著者らは「PAD患者はエビデンスに基づいたがん予防とスクリーニングを受けるべき」と述べている。

(ケアネット 金沢 浩子)