降圧薬を減らすと認知機能の低下が抑制される!?

中年期の高血圧は認知機能低下のリスクであるという報告があるが1)、日常生活動作(ADL)が低下している高齢者では血圧が高いほうが認知機能の低下が小さいという報告もある2)。このように、高齢者における降圧薬と認知機能の関係は複雑である。そこで、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のBocheng Jing氏らの研究グループは、長期介護施設に入居する65歳以上を対象として、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、降圧薬の減薬により認知機能の低下が抑制されることが示唆された。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年9月23日号で報告された。
研究グループは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人1万2,644例を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。本研究の適格基準は65歳以上、12週間以上の入所などとし、血圧160/90mmHg超、心不全の既往、入所時に降圧薬の服用なしのいずれかに該当する患者は除外した。対象を降圧薬の使用状況に基づき、減薬群(前週と比較して使用薬剤数の減少または30%以上の用量減少が認められ、その状態が2週以上持続)、継続群に分類して最長2年間追跡した。主要評価項目は、Cognitive Function Scale(CFS、スコア範囲:1[正常]~4[重度障害])に基づく認知機能とした。
主な結果は以下のとおり。
・対象1万2,644例(減薬群:1,290例、継続群1万1,354例)の平均年齢は77.7歳、男性の割合は97.4%(1万2,053例)であった。
・追跡終了時に認知機能が低下(ベースライン時と比較してCFSスコアが悪化)していた割合は、継続群が12.1%であったのに対し、減薬群は10.8%であり、減薬群で有意な認知機能の低下抑制がみられた(調整オッズ比[aOR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.78~0.99、p=0.04、per protocol解析)。
・減薬群における認知機能の低下抑制は、認知症を有する集団でも認められた(aOR:0.84、95%CI:0.77~0.98、per protocol解析)。
本研究結果について、著者らは「長期介護施設に入所する高齢者における降圧薬の減薬は、認知機能の低下を抑制することが示唆された。高齢者の薬物療法を最適化することにより、認知機能を維持し、有害事象を最小限に抑えるためには、患者中心のアプローチが重要であることが強調された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)
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