岐阜大学医学部医学科の学生を対象として、医師国家試験に不合格となる学生の特徴を検討する研究が実施された。本研究の結果が、塩入 俊樹氏(岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経科学講座 精神医学分野)らによって、BMC Medical Education誌2024年8月27日号で報告された。
本研究では、2012~18年に岐阜大学医学部医学科に入学した学生637人を対象として、入学時と1、2、4、6年次の5つの時点のデータを収集した。データには、大学入学前の情報(性別、年齢、出身高等学校の所在地、成績など)および大学在学中の成績(基礎医学、臨床医学、CBT-IRT、卒業試験の成績など)が含まれた。これらのデータを用いて、ロジスティック回帰分析を実施し、医師国家試験の予測合格率を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・不合格となる学生が多かった因子は以下のとおりであった。
【大学入学前の因子】
男性、入学時の年齢が高い、高等学校の所在地が岐阜県・愛知県以外、高等学校のGPAが低い、センター試験(現:共通テスト)の点数が低い
【大学入学後の因子】
基礎医学の成績が低い、臨床医学の成績が低い、CBT-IRTの成績が低い、Pre-CC OSCEの成績が低い、クリニカルクラークシップの成績が低い、留年経験あり
・ロジスティック回帰分析において、合格者と不合格者の間で有意差が認められた因子は以下のとおりであった。
【入学時】
入学時の年齢、高等学校の所在地
【1年次終了時】
入学時の年齢、高等学校の所在地、基礎科学の成績
【2年次終了時】
入学時の年齢、高等学校の所在地、基礎医学の成績
【4年次終了時】
入学時の年齢、高等学校の所在地、CBT-IRTの成績、Pre-CC OSCEの成績
【6年次終了時】
入学時の年齢、高等学校の所在地、CBT-IRTの成績、Pre-CC OSCEの成績、卒業試験の成績、クリニカルクラークシップの成績
・ロジスティック回帰分析により予測合格率を推定し、学生を高リスク群(予測合格率95%未満)と低リスク群(予測合格率95%以上)に分類した。その結果、医師国家試験合格率は、6年次終了時に低リスク群に分類された学生が99.2%であったのに対し、高リスク群では64.4%であった。
本研究結果について、著者らは「多変量解析に基づくリスク分析は、模擬試験の成績などの単変量解析に基づくリスク分析よりも、より効果的な対策を行うための情報を提供することが可能である。不合格となることを防ぐため、早急に具体的な対策(再履修など)を講じる必要がある」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)