転移を有する乳がん患者の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)における特定のゲノム変化の検出は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)の悪化と関連していたことを、カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのKyle Dickinson氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析によって明らかにした。JAMA Network Open誌2024年9月5日号掲載の報告。
これまでにも転移乳がんのctDNAと予後の関連を調査した報告は存在するが、研究デザインや分析方法などに不一致があり、矛盾する結論が得られている。そこで研究グループは、研究デザインの違いを考慮しながら特定のctDNAの変化を検出・評価することで、転移乳がんにおけるctDNAとOSやPFS、DFSの関連をより理解することができると考え、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。
研究グループは、CINAHL、Cochrane Library、Embase、MedlineおよびWeb of Scienceをデータベースの開設から2023年10月23日まで検索した。メタ解析には、(1)転移/進行/StageIVの乳がんと診断された女性(18歳以上)が登録され、(2)ベースラインの血漿ctDNAデータがあり、(3)OSやPFS、DFSとそのハザード比(HR)の報告がある臨床研究を含めた。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は2人の独立した研究者により実施され、データはランダム効果モデルを使用して統合された。
主要評価項目はctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存との関連で、副次評価項目は研究方法と生存との関連であった。
主な結果は以下のとおり。
・20~94歳の女性患者4,264例を対象とした37件の研究が解析に含まれた。前向き研究が20件(54%)、後ろ向き研究が17件(46%)であった。
・ctDNAにおける特定のゲノム変化の検出と生存率低下の間に有意な関連が認められた(HR:1.40、95%信頼区間[CI]:1.22~1.58、p<0.001)。
・各生存転帰のサブグループ解析でも同様の結果が得られた。
【OS】HR:1.44、95%CI:1.24~1.65、p<0.001
【PFS】HR:1.31、95%CI:1.07~1.55、p<0.001
【DFS】HR:1.56、95%CI:1.22~1.89、p<0.001
・TP53およびESR1変異と生存率低下の間に有意な関連が認められた(それぞれのHR:1.58[95%CI:1.34~1.81]および1.28[95%CI:0.96~1.60]、いずれもp<0.001)。
・PIK3CA変異は生存率低下との関連を示さなかった(HR:1.19、95%CI:0.85~1.53)。
・前向き研究でも後ろ向き研究でも同様に生存率の低下が認められた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.15~1.80]および1.37[95%CI:1.17~1.56]、いずれもp<0.001)。
・検出方法別に層別化すると、次世代シーケンシングとデジタルPCRのいずれかによるctDNA検出は生存率の低下と関連していた(それぞれのHR:1.48[95%CI:1.22~1.74]、1.28[95%CI:1.05~1.50]、いずれもp<0.001)。
これらの結果より研究グループは、「ctDNAによる特定のゲノム変化の検出は、OSやPFS、DFSの悪化と関連しており、転移乳がんの予後バイオマーカーとしての可能性を示唆している。これらの結果は、ctDNAの実用性を判断する将来の研究デザインの指針となるだろう」とまとめた。
(ケアネット 森)