ニボルマブは、切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する術前補助療法として本邦で使用されているが、米国ではこれに加えて、2024年10月に術前・術後補助療法としての適応も取得している。その根拠となった第III相「CheckMate 77T試験」の日本人集団の結果について、産業医科大学の田中 文啓氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。
CheckMate 77T試験 試験デザインと結果の概要
試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験
対象:切除可能なStageIIA(>4cm)~IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)
試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群:229例)
対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群:232例)
評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づく無イベント生存期間(EFS)
[副次評価項目]盲検下独立病理判定に基づく病理学的完全奏効(pCR)・病理学的奏効(MPR)、安全性など
追跡期間中央値25.4ヵ月時点における全体集団のEFS中央値は、ニボルマブ群では未到達、プラセボ群では18.4ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.58、97.36%信頼区間[CI]:0.42~0.81)。pCR率はニボルマブ群25.3%、プラセボ群4.7%(オッズ比[OR]:6.64、95%CI:3.40~12.97)、MPR率はそれぞれ35.4%と12.1%であった(OR:4.01、95%CI:2.48~6.49)。
日本人集団における主な結果は以下のとおり。
・全体集団461例中、日本人は68例(ニボルマブ群40例、プラセボ群28例)含まれており、全体集団と比較して、PS0の患者やプラチナ製剤としてシスプラチンを使用する患者の割合が高かった。また、日本人集団のニボルマブ群はプラセボ群と比較して、扁平上皮がん、喫煙歴あり、PD-L1発現1%未満の患者の割合が高かった。
・4サイクルの術前補助療法を完遂した割合は、ニボルマブ群で65%、プラセボ群で82%、手術を実施した割合はそれぞれ90%と93%、術後補助療法を実施した割合は60%と71%、術後補助療法を完遂した割合は45%と36%であった。ニボルマブ群では、全体集団と比較して、術前補助療法完遂の割合は低いものの(日本人集団vs.全体集団:65% vs.85%)、手術実施の割合は高かった(同:90% vs.78%)。
・追跡期間中央値24.9ヵ月時点におけるEFS中央値は、ニボルマブ群では未到達、プラセボ群では12.1ヵ月であった(HR:0.46、95%CI:0.22~0.95)。12ヵ月EFS率はニボルマブ群82%、プラセボ群50%、18ヵ月EFS率はそれぞれ77%と43%であった。
・pCR率はニボルマブ群42.5%、プラセボ群0%(OR:NA)、MPR率はそれぞれ52.5%と7.1%であった(OR:14.37、95%CI:3.00~68.82)。
・全期間におけるGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ群55.0%(22/40例)、プラセボ群39.3%(11/28例)に認められ、全体集団よりも高い割合で発現していた(全体集団はそれぞれ32.5%、25.2%)。これを期間別にみると、術前期間ではニボルマブ群47.5%(19/40例)、プラセボ群39.3%(11/28例)、術後期間ではそれぞれ12.5%(3/24例)と0%(0/20例)と、術前期間における発現割合が高かった。
・日本人集団でとくに発現割合が高かった免疫介在性有害事象は、皮膚障害や間質性肺疾患などであった。
講演後、全体集団と比較した場合の手術実施割合、pCR率、MPR率の高さの理由について質問があった。田中氏は、「(明確な理由は不明であるものの)無作為化により対照群に割り付けられる患者の不利益を踏まえ、切除可能性やPSなどを考慮して、厳格に患者選定を行った結果ではないか」と考察した。また、術前のみニボルマブを使用するCheckMate 816試験の結果も踏まえ、pCRが得られた場合の後治療の要否やnon-pCRであった場合の後治療など、今後のクリニカルクエスチョンについても議論があった。
田中氏は、今回の有効性と安全性プロファイルの結果はCheckMate 77T試験の全体集団の結果と一致しているとし、「切除可能NSCLC日本人患者に対するニボルマブの術前・術後補助療法としての使用可能性を支持するものである」とまとめた。
(ケアネット 新開 みのり)