高K血症または高リスクのHFrEF、SZC併用でMRAの長期継続が可能か/AHA2024

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/27

 

 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の予後を改善することが報告されている。しかし、MRAは高カリウム血症のリスクを上げることも報告されており、MRAの減量や中断につながっていると考えられている。そこで、高カリウム血症治療薬ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(SZC)をMRAのスピロノラクトンと併用することが、高カリウム血症または高カリウム血症高リスクのHFrEF患者において、スピロノラクトンの至適な使用に有効であるかを検討する無作為化比較試験「REALIZE-K試験」が実施された。本試験の結果、SZCは高カリウム血症の発症を減少させ、スピロノラクトンの至適な使用に有効であったが、心不全イベントは増加傾向にあった。本研究結果は、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のLate-Breaking Scienceで米国・Saint Luke’s Mid America Heart Institute/University of Missouri-Kansas CityのMikhail N. Kosiborod氏によって発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2024年11月18日号に同時掲載された。

 本試験の対象は、高カリウム血症(血清カリウム値5.1~5.9mEq/LかつeGFR≧30mL/min/1.73m2)または高カリウム血症高リスクのHFrEF(左室駆出率40%以下、NYHA分類II~IV度)患者203例であった。本試験は導入期と無作為化期で構成された。導入期では、スピロノラクトンを50mg/日まで漸増し、必要に応じてSZCを用いて血清カリウム値を正常範囲(3.5~5.0mEq/L)に維持した。導入期の終了時において、スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続、かつ血清カリウム値が正常範囲であった患者をSZC群とプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化期では、スピロノラクトンとSZCまたはプラセボを6ヵ月投与した。主要評価項目と主要な副次評価項目は以下のとおりで、上から順に階層的に検定した。

【主要評価項目】
・スピロノラクトンの至適な使用(スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続し、血清カリウム値が正常範囲を維持し、高カリウム血症に対するレスキュー治療なし)

【主要な副次評価項目】
・無作為化時のスピロノラクトン用量での血清カリウム値正常範囲の維持
・スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続
・高カリウム血症発症までの期間
・高カリウム血症によるスピロノラクトンの減量または中止までの期間
・カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)の変化量

 主な結果は以下のとおり。

・主要評価項目のスピロノラクトンの至適な使用は、SZC群71%、プラセボ群36%に認められ、SZC群が有意に優れた(オッズ比[OR]:4.45、95%信頼区間[CI]:2.89~6.86、p<0.001)。
・主要な副次評価項目の上位4項目はSZC群が有意に優れた。詳細は以下のとおり。

<無作為化時のスピロノラクトン用量での血清カリウム値正常範囲の維持>
SZC群58% vs.プラセボ群23%(OR:4.58、95%CI:2.78~7.55、p<0.001)

<スピロノラクトンを25mg/日以上の用量で継続>
SZC群81% vs.プラセボ群50%(OR:4.33、95%CI:2.50~7.52、p<0.001)

<高カリウム血症発症までの期間>
ハザード比[HR]:0.51、95%CI:0.37~0.71、p<0.001

<高カリウム血症によるスピロノラクトンの減量または中止までの期間>
HR:0.37、95%CI:0.17~0.73、p=0.006

・KCCQ-CSSの変化量は、両群に有意差はみられなかった(群間差:-1.01点、95%CI:-6.64~4.63、p=0.72)。
・心血管死・心不全増悪の複合は、SZC群11例(心血管死1例、心不全増悪10例)、プラセボ群3例(それぞれ1例、2例)に認められ、SZC群が多い傾向にあった(log-rank検定による名目上のp=0.034)。

(ケアネット 佐藤 亮)