高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が有意に改善したことが報告されている。今回、本試験の探索的バイオマーカー解析で、T細胞浸潤18遺伝子発現プロファイル(TcellinfGEP)、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーなどのバイオマーカーとpCRおよびEFSとの関連を調べた結果について、米国・Baylor-Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。
バイオマーカーはベースラインでの腫瘍検体で評価した。TMB、BRCA、相同組換え修復欠損(HRD)は全エクソームシーケンシング(WES)、それ以外のバイオマーカーはRNAシーケンシングで調べた。主要評価項目は、TcellinfGEP、TMB、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーとpCRおよびEFSとの関連、副次評価項目は、TNBC分子サブタイプ、HRD状況、HER2遺伝子発現/シグネチャー、PTEN欠損シグネチャーとpCRおよびEFSとの関連とした。データカットオフは2021年3月23日であった。
主な結果は以下のとおり。
・WESデータはペムブロリズマブ+化学療法群641例、プラセボ+化学療法群305例、RNAシーケンシングデータはペムブロリズマブ+化学療法群618例、プラセボ+化学療法群286例で得られた。
・TcellinfGEPは、両群ともpCRおよびEFSと正の関連を示した。
・TMBは、ペムブロリズマブ+化学療法群ではpCRおよびEFSと正の関連を示した。プラセボ+化学療法群ではpCRと正の関連を示したが、EFSとは示さなかった。
・TcellinfGEPの第1三分位未満と第1三分位以上のサブグループ解析において、EFSはどちらもペムブロリズマブ+化学療法群が優位であった。
・TMBの175変異/エクソーム未満と175変異/エクソーム以上のサブグループ解析において、EFSはどちらもペムブロリズマブ+化学療法群が優位であった。
・TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーのうち、解糖系と細胞増殖は両群ともpCRと正の関連を示したが、EFSとは示さなかった。
・PTEN欠損シグネチャーとHRD状況は、両群でpCRと正の関連を示した。
・TNBC分子サブタイプ(BLIA、BLIS、LAR、MES)別のサブグループ解析では、どの分子タイプもEFSはペムブロリズマブ+化学療法群で優位であった。
・HRD状況のサブグループ解析では、陰性と陽性のどちらのサブグループにおいてもペムブロリズマブ+化学療法群でpCR、EFSとも優位であった。
O’Shaughnessy氏は、「これらの結果から、TcellinfGEPなどのいくつかのバイオマーカーはpCRやEFSの予後予測因子であるが、ペムブロリズマブの効果予測因子ではないことが示唆された。TcellinfGEP、TMB、分子サブタイプ、HRD、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーを含む、さまざまなバイオマーカーで定義されたサブグループで、ペムブロリズマブ+化学療法は化学療法単独に対する効果の優位性が示された」とまとめた。
(ケアネット 金沢 浩子)