肺の生活習慣病COPD

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2007/10/25

 



2007年10月23日、COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬スピリーバ承認取得3周年を機に、発売元である日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ファイザー株式会社が日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏(写真)およびCOPD患者ご夫妻を迎え、記念記者会見を開いた。講演および会見の内容を「肺の生活習慣病COPD」、「多彩な併存症を持つ全身性疾患であるCOPD」、「COPD患者の生の声」の3回に分けて掲載する。

わが国の喫煙率は高く、主に喫煙を原因とするCOPDは、まさしく「肺の生活習慣病」である。COPDは世界の死亡原因第4位に挙げられ(*1)、わが国でも2000年に死因の第10位に初めて登場した(*2)。

木田氏によると、COPDは初めに断続的な咳、痰が生じ、やがて息切れの出現、息切れの増悪を経て、呼吸困難のため在宅酸素療法に頼り、死亡する経過を辿る。特に進行は非常に緩徐であるため、歳のせいなどと誤解され、医師も、患者も気づかないことが多い。そのため、わが国の推定COPD患者が530万人いるにもかかわらず(*3)、実際に22.3万人しか治療を受けていない(*4)。またCOPDが進行すると、患者のQOLが大きく低下し、運動能力が落ち、やがて寝たきりとなり、大きな問題となる。一方、COPDは急性増悪と呼ばれる急激な症状の悪化が繰り返し起こり、COPDの進行を助長させる恐れがある。中等症以上の患者は急性増悪が起きると、多くの場合は入院治療が必要となり、その費用は1回平均69万円で、医療費を考えても早期な診断と治療が望ましい。木田氏は、COPDの診療には、基幹病院とプライマリ・ケアの医療連携が必要と力説した。

さらに、木田氏はCOPDが喘息と誤診されることがしばしばあるが、両者の発症原因はまったく異なる疾患で、異なった治療が必要と説明した。3年前、1日1回吸入する抗コリン薬であるスピリーバ(チオトロピウム)の登場で、COPD患者のQOLを大きく改善することが可能になった。その主な治療効果は、気管支拡張効果により、息切れ回数の減少、身体活動の向上、急性増悪の軽減をもたらす。また抗炎症作用によって、全身性炎症反応を阻害することも考えられる。

最後に、木田氏はCOPDが治療できる病気、予防できる病気とのWHOのメッセージを紹介し、COPD治療の必要性を訴えた。

(ケアネット 呉 晨)

原著論文はこちら

*1 World Health Organization. World Health Report 2004. Statistical Annex. Annex table 2 and 3: 120-131.

*2 国民衛生の動向(厚生の指標、臨時増刊)(財団法人厚生統計協会) 2002; 第49巻, 第9号, p47