自分の周りにいる人は全員、何かしらのアレルギー症状を持っている気がする。そう感じるのは、あながち間違いではないようだ。米国では成人の3人に1人、小児の4人に1人が季節性アレルギーや食物アレルギー、アトピー性皮膚炎に罹患しているとする2件の調査報告書が、米疾病対策センター(CDC)の下部組織である国立衛生統計センター(NCHS)により公表された。小児と成人でのアレルギー疾患の有病率に関するこれらの報告書はいずれも、「NCHS Data Brief」1月号(No.459、No.460)に掲載された。
NCHSのこれまでの調査では、アレルギー疾患の有無を対象者の自己報告に基づき調べていたが、今回の調査ではこれを改め、医師に診断されたアレルギー疾患の有無を確認した。また、これまでの調査では小児(0〜17歳)のみを対象としていたが、今回の調査では初めて成人も対象に加えた。
その結果、2021年には、成人の31.8%、小児の27.2%がアレルギー疾患を一つ以上持っていることが明らかになった。成人と小児のいずれでも、有病率が最も高いアレルギー疾患は、一般的に花粉症の名で呼ばれる季節性アレルギーだった(小児18.9%、成人25.7%)。成人での季節性アレルギーの有病率は、白人(28.4%)の方が、黒人(24.0%)、ヒスパニック系(18.8%)、アジア系(17.0%)よりも高く、また、男性(21.1%)よりも女性(29.9%)の方が高かった。一方、小児での有病率は、ヒスパニック系(15.3%)やアジア系(11.0%)よりも黒人(21.3%)や白人(20.4%)の方が高く、また、女児(17.7%)よりも男児(20.0%)の方が高かった。
成人では、その他のアレルギー疾患として、7.3%がアトピー性皮膚炎、6.2%が食物アレルギーを有していた。いずれのアレルギー疾患も、有病率は男性よりも女性の方が高かった(アトピー性皮膚炎:男性5.7%、女性8.9%、食物アレルギー:男性4.6%、女性7.8%)。食物アレルギーの有病率は、年齢層が上がるにつれ低下していた(18〜44歳:6.6%、45〜64歳:6.7%、65〜74歳:5.1%、75歳以上:4.5%)。
小児でのアトピー性皮膚炎と食物アレルギーの有病率は、10.8%と5.8%だった。アトピー性皮膚炎の有病率は男児・女児ともに10.8%だった。有病率を年齢層別に見ると、6〜11歳の12.1%が最も高く、0〜5歳の10.4%、12〜17歳の9.8%がそれに続いた。食物アレルギーについても男児(5.9%)と女児(5.8%)でほぼ同じだったが、有病率は、年齢層が上がるにつれて上昇していた(0〜5歳:4.4%、6〜11歳:5.8%、12〜17歳:7.1%)。
小児でのアレルギー疾患の有病率に関する報告書を執筆したCDCのBenjamin Zablotsky氏は、「この研究は、アレルギー疾患の有病率が上昇しているのかどうかを確認するようにデザインされたものではなかった。それでも、以前の報告に準拠すると、有病率の上昇は明らかだ」と話す。
専門家たちは、アレルギー疾患の患者は増加の一途をたどっていると話す。そのような専門家の一人である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のPraveen Buddiga氏は、気候変動がアレルギー疾患罹患者の増加を招いている可能性を指摘する。「われわれは毎年のように、森林火災などの災害につながる干ばつや気温上昇を経験している。冬も、以前より寒さが厳しく長いものになっている。温暖化は、季節性アレルギーシーズンの到来を早める(つまりシーズンが長くなる)一方で、年々厳しさの増す冬の気候条件は、肌を乾燥させ、湿疹を生じやすくする」と説明する。
米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のPeter Lio氏は、「アレルギー疾患患者数の増加理由は不明」としながらも、「環境内の化学物質や汚染物質は、皮膚、腸、肺の障壁を損傷する可能性がある」と指摘。「一度損傷すると、アレルゲンは通常とは異なる方法で体内に侵入し、アレルギー感作を引き起こす可能性が高くなる」と説明する。
ただし、Buddiga氏は、良いニュースとして、季節性アレルギーに対する注射による治療の向上を挙げている。またアトピー性皮膚炎の治療に関してはLio氏が、「治療が向上し、安全性も増している。また、治療の一部を軽減、あるいは中止できる程度に状態が良くなることを意味する“寛解”の概念についても、医師たちは意見交換をし始めている」と話している。
[2023年1月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら