ビタミンDを積極的に摂取することによって、2型糖尿病の発症リスクがわずかに低下する可能性を示唆する研究結果が報告された。ただし、専門家は、ビタミンD摂取が健康的な食事や運動習慣に取って代わるものではないとしている。米タフツ医療センターのAnastassios Pittas氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に2月7日掲載された。
ビタミンDは骨量減少や骨折を減らす目的で、サプリメントなどとして摂取されることがある。近年、ビタミンDには骨代謝改善以外にもさまざまな作用のあることが分かり、その中の一つとして2型糖尿病リスクを下げる可能性も示唆されている。ただし、この点についての明確なエビデンスは得られていない。そこでPittas氏らは、2型糖尿病リスクの高い人を対象に、ビタミンD投与による介入を行った研究報告を対象とするシステマティックレビューとメタ解析を行った。
PubMed、Embaseなどの文献データベースに2022年12月9日までに収載された報告を対象として、前糖尿病状態にある成人を対象に経口ビタミンDを投与し、糖尿病新規発症リスクをプラセボと比較した研究報告を検索。3件の無作為化比較試験が抽出された。
メタ解析の結果、ビタミンD投与によって糖尿病発症リスクは15%有意に低下することが明らかになった〔ハザード比(HR)0.85(95%信頼区間0.75~0.96)〕。3年間の介入期間中の絶対リスクの差は3.3%(同0.6~6.0%)とわずかではあるが有意だった。なお、介入によって血清25-ヒドロキシビタミンDレベルがより高値(50ng/mL以上)に維持されていた群でのサブグループ解析では、プラセボ群に対して糖尿病発症リスクが76%低下〔HR0.24(0.16~0.36)〕、3年間の絶対リスクは18.1%低下(11.7~24.6)と、より顕著なリスク抑制効果が認められた。また、前糖尿病状態から正常耐糖能への改善は、ビタミンD投与群の方が30%多く認められた〔率比1.30(1.16~1.46)〕。
この結果を基にPittas氏は、「2型糖尿病リスクが高い場合は、その発症抑制のためにビタミンDが有効であることが示された。ただしこの研究結果は、2型糖尿病リスクが平均的な人には当てはまらず、また糖尿病発症抑止のための至適用量もまだ不明だ」と述べている。さらに、「この結果を、ビタミンDを服用すれば、食習慣を変えたり運動を心がける必要がなくなるというメッセージとはしたくない。健康的な食事や習慣的な運動に代わるサプリメントなどは存在しない」と、拡大解釈しないよう注意を喚起している。
ビタミンDと糖尿病の関連については、赤道から離れた高緯度地域で糖尿病の有病率が高いという疫学データが発表されてから、関心が集まるようになった。ビタミンDは紫外線に当たった時に皮膚で産生されるため、高緯度地域の人ではそのレベルが低くなりやすい。その後の研究で、実際に血液中のビタミンD濃度と2型糖尿病リスクとの間に関連性のあることが報告され、また基礎的な研究からは、ビタミンDにインスリン産生を促す働きがあることも分かってきた。
本研究には関与していない、米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスのIsaac Dapkins氏は、「前糖尿病状態の人の血中ビタミンDレベルを測定し、欠乏状態であればサプリメントなどによる補給が、2型糖尿病発症リスク抑制につながる可能性がある。もちろん、運動などの方がより効果的だが、前糖尿病に該当し、まだ自分の血中ビタミンDレベルを知らない人は、医師に相談して測定してもらうのも良いのではないか」と述べている。
[2023年2月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら