お腹や腕の周りの脂肪が増えたという人は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の発症リスクが高い可能性のあることが、四川大学(中国)のHuan Song氏らによる研究で示唆された。一方で、筋力が強い人では筋力が弱い人と比べて神経変性疾患のリスクが低い可能性のあることも示された。この研究結果は、「Neurology」に7月24日掲載された。
Song氏らは今回、UKバイオバンクの参加者41万2,691人(登録時の平均年齢56.0歳、女性55.1%)の健康上および身体上の特徴を平均で9.1年追跡したデータを分析した。参加者は研究登録時に、ウエストやヒップのほか、握力や骨密度、脂肪量、除脂肪体重などの測定を受けていた。
追跡期間中に8,224人がアルツハイマー病やその他のタイプの認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患を発症していた。高血圧や喫煙、飲酒、糖尿病など脳に影響を与える可能性のある健康上のリスク因子を調整して分析した結果、お腹周りの脂肪量が多い(中心性肥満)人では、脂肪量が少ない人と比べて神経変性疾患のリスクが13%高いことが示された。また、腕周りの脂肪量が多い人も、脂肪量が少ない人と比べてリスクが18%高いことが判明した。その一方で、筋力が強い人では筋力が弱い人と比べてこれらの神経変性疾患のリスクが26%低いことが示された。
Song氏は、「この研究は、体組成を改善することで、これらの疾患の発症リスクを抑制できる可能性があることを浮き彫りにした」と話す。また同氏は、「健康的な筋肉を育てながらお腹や腕の周りの脂肪を減らすことにターゲットを絞った介入は、一般的な体重コントロールよりもこれらの疾患に対する予防効果が高いかもしれない」と付け加えている。
さらに媒介分析からは、腕や腹部の脂肪量が多いことと神経変性疾患との関連には、脳に有害な影響を与え得る心疾患や脳卒中のような心血管疾患が部分的に関与している可能性も示されたという。この点についてSong氏は、「アルツハイマー病やパーキンソン病、そのほかの神経変性疾患の発症を予防したり、発症を遅らせたりするには、こうした心血管疾患の管理が重要であることを明確に示したものだ」と「Neurology」の発行元である米国神経学会(AAN)のニュースリリースの中で指摘している。
[2024年7月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら