医師といえば威厳に満ちた印象かもしれないが、新たなレビュー研究によると、患者は、あまり威圧感を感じさせない医師に対しての方が安心感を抱きやすいようだ。医師が、患者と目線を合わせるためにベッドサイドに座ったりしゃがんだりして診断やケアについて話すことで、患者の信頼感や満足度が向上する可能性のあることが明らかになった。米ミシガン大学医学部の Nathan Houchens氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に7月17日掲載された。Houchens氏は、「この研究により、医師が座ることの重要性に対する認識と、医師のそのような態度を患者が評価しているということが広まることを期待している」と話している。
この研究では、論文データベースから抽出した、入院患者と対話する際の医師の姿勢に関する14件の研究結果の分析が行われた。14件のうちの6件はランダム化比較試験、4件は準実験的研究、残る4件は観察研究だった。
その結果、医師の姿勢に関する患者の好みを報告していた4件の研究のうちの1件では、座っている医師と話す方が良いと考えている患者の割合は50.6%に上ったのに対し、立っている医師と話す方が良いと考えている患者の割合は17.3%にとどまることが報告されていた。また、白人と黒人/ヒスパニックの患者を対象にした研究でも、医師と話をする際に、医師が立っているよりも座っている方が良いと答えた患者の割合は、それぞれ60%、58%と半数を超えていた。
別の研究では、患者と一緒に座っている医療従事者は、立っている医療従事者よりも好印象を与えることが報告されていた。例えば、勤務開始時に看護師が患者のベッドサイドに3~5分間座るという実践を3年間実施することで、患者と看護師間のコミュニケーションに関する評価のスコアが大幅に上昇することが示されていた。同様に、座って患者とコミュニケーションを取る医師に対しては、「担当医は自分の話を注意深く聞き、分かりやすく説明してくれる」という設問に対して「常に当てはまる」と評価する患者が多かった。
研究グループは、「患者は、臨床医と話す際には医師が自分と同じレベルに立ってくれることを期待し、またそれを望んでいるものと考えられる。コミュニケーションを取る際に医師が患者に目線の高さを合わせることは、ヒエラルキーを均等にするための方法の一つだ」と述べている。
さらに研究グループは、「このような力の共有は、入院時のようなストレスと緊急性の高い時期に、患者にとって特に重要になるだろう」と推測する。しかし、残念なことに、患者とのコミュニケーションを改善するためのこのシンプルな方法でも、医療従事者にとっては実践が難しい場合もあるようだ。研究グループの説明によると、多くの研究で、医師が患者との同席を定められていても、必ずしもそれが守られているわけではなく、特に、病室に専用の座席がない場合にはその傾向が顕著であることが示されているのだという。
研究グループは、医師の姿勢が患者の信頼感に与える影響についての理解を深めるためには、さらなる研究が必要であると述べている。なお、最近開始されたミシガン大学の研究では、病院を患者の治癒にとってより有益な環境とするための要因の一つとして医師の姿勢に着目し、研究を進めている。この研究では、医師が患者のベッドサイドに座ること、患者を診察室へ温かく迎え入れること、会話中に患者の優先事項や背景について質問することが奨励されている。研究グループは、入院期間、再入院、患者の満足度などに違いがあるかどうかを調べる予定であるという。
[2024年7月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら