ニボルマブ(商品名オプジーボ)とイピリムマブ(商品名ヤーボイ)の2種類の免疫チェックポイント阻害薬の併用療法により、進行メラノーマ患者の生存期間を大幅に延長できる可能性のあることが、10年にわたる追跡調査により明らかになった。米ワイル・コーネル・メディスンのJedd Wolchok氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月15日掲載された。Wolchok氏は、「これは、慣例を変える試験だった。対象患者の平均生存期間は現在6年を超えている。追跡3年時点でがんの進行が認められなかった患者は、10年後も再発や他の病気を発症することなく生存している可能性が高い」と話している。
がん細胞は、免疫チェックポイントという正常な免疫システムを利用して免疫細胞の攻撃を回避することが知られている。ニボルマブとイピリムマブはともに、T細胞にブレーキをかけるシグナルを阻害することでT細胞を活性化し、がん細胞を攻撃させる。
今回報告された研究は、ランダム化二重盲検第III相試験(CheckMate 067)の10年間の追跡調査の結果である。この試験では、世界21カ国のセンターで治療を受けた進行メラノーマ患者945人が、ニボルマブとイピリムマブによる併用療法を受ける群(併用療法群、314人)、ニボルマブ単剤療法を受ける群(ニボルマブ群、316人)、イピリムマブ単剤療法を受ける群(イピリムマブ群、315人)にランダムに割り付けられていた。治療は、病態進行や許容できない毒性が認められるか、患者が治療に対する同意を撤回するまで続けられた。
最低10年に及ぶ追跡期間における全生存期間中央値は、併用療法群で71.9カ月、ニボルマブ群で36.9カ月、イピリムマブ群で19.9カ月であった。併用療法群の死亡リスクはイピリムマブ群に比べて47%、ニボルマブ群の死亡リスクはイピリムマブ群に比べて37%低かった。メラノーマ特異的生存期間の中央値は、併用療法群では120カ月を超え(中央値には未到達)、ニボルマブ群で49.4カ月、イピリムマブ群で21.9カ月であった。さらに、3年間生存し、病態進行が認められなかった患者での10年間のメラノーマ特異的生存率は、併用療法群で96%、ニボルマブ群で97%、イピリムマブ群で88%であった。研究グループは、これらの治療では薬剤を長期にわたって服用する必要があることを安全性の懸念事項としていたが、追跡期間中に長期毒性は認められなかったという。
本研究には関与していない、米フォックス・チェイスがんセンター外科部長のJeffrey Farma氏は、「この追跡調査は、進行メラノーマ患者に対する免疫療法でわれわれが成し遂げた進歩と、状況がいかに劇的に変化したかを改めて浮き彫りにするものだ。本研究結果は、10年後も生存率が向上し続けていることを裏付けている」と述べている。
論文の共著者である米ダナ・ファーバーがんセンターのメラノーマセンターおよび免疫腫瘍学センター所長であるF. Stephen Hodi氏は、「この試験は現時点では、免疫療法の長期的な効果と免疫療法の併用で治療効果が改善する可能性を患者に説明する上で重要な要素となっている」と話す。同氏はさらに、「10年間の追跡調査を経て、われわれは、進行メラノーマを管理可能な慢性疾患に変え得る治療法が存在することを、患者に自信を持って伝え、将来に対する自信を持たせることができるようになった」と喜びを表している。
[2024年9月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら