妊娠期、子どもの乳幼児期における大気汚染物質への曝露と小児喘息の発症との関連が、日本全国のデータを用いて詳細に検討された。その結果、低濃度の大気汚染物質への複合曝露が、持続性小児喘息の発症と関連していることが明らかとなった。昭和大学医学部リウマチ・膠原病内科の城下彰宏氏らによる研究の成果であり、「Ecotoxicology and Environmental Safety」に6月20日掲載された。
小児喘息の発症は、環境的、社会経済的、遺伝的要因の影響を受ける。大気汚染は喘息の発症や悪化と関連するが、大気汚染物質は複雑な混合物である。比較的低濃度の大気汚染物質の複合曝露による影響については十分に研究されておらず、海外と日本では大気汚染の状況も異なり、エビデンスが不足している。
そこで著者らは、株式会社JMDCの保有するデータベースを用いて、2010年1月~2017年1月に出生した児とその母親のデータを抽出し、妊娠中、乳幼児、幼児期における大気汚染物質への曝露と4~5歳時点の喘息との関連を調べた。大気汚染については国立環境研究所のデータより、微小粒子状物質(PM2.5)、浮遊粒子状物質(SPM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、一酸化炭素(CO)、光化学オキシダント(Ox)、二酸化硫黄(SO2)、全炭化水素(THCs)、非メタン炭化水素(NMHCs)の各濃度を調べた。
その結果、大気汚染物質の分布は、PM2.5とSPMは九州地方と瀬戸内海地方に多く、NOとNO2は関東地方に多かった。また、SO2は瀬戸内海地方と鹿児島湾地方に多いことが分かった。
解析対象の母親(年齢中央値32.0歳)と子どものペアは5万2,526組(1,149市町村)であり、そのうち1万2,703人(24.2%)の子どもが4~5歳時点で喘息を有していた。
次に、weighted quantile sum(WQS)regressionモデル(各大気汚染物質ごとに重み付けを行い、複合曝露の影響をサマリースコアとして算出する方法)で解析したところ、妊娠期、乳児期、幼児期の大気汚染物質の複合曝露が10パーセントタイル上昇するごとに、それぞれ喘息発症のオッズが1.04倍(95%信頼区間1.02~1.05)、1.02倍(同1.01~1.03)、1.03倍(同1.01~1.04)となることが明らかとなった。
今回の研究の結論として著者らは、「比較的低濃度の大気汚染物質の複合曝露が、小児持続性喘息と関連している」と述べている。また、日本では交通関連の大気汚染は減少しているが、自動車以外からのPM2.5排出を削減することの重要性や、日本のエネルギー生産が化石燃料に依存していることなどの問題を指摘した上で、さらなる大気汚染濃度の改善が必要だとしている。
[2024年7月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら