歯科患者の不安を客観的に評価できる質問票

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/10/22

 

 歯科治療を受ける患者の不安や恐怖の強さを、6種類の顔のイラストから選択してもらって客観的に評価する質問票が開発された。大阪歯科大学欠損歯列補綴咬合学講座の三野卓哉氏らによる研究によるもので、詳細は「The Journal of Advanced Prosthodontics」に8月20日掲載された。開発された質問票の信頼性や妥当性の検証結果も報告されている。

 歯科治療に強い不安や恐れを抱く「歯科恐怖症」の有病率は、成人の5~22%と報告されている。歯科恐怖症では歯科受診の機会が少なくなり口腔疾患が進行してしまうというリスクばかりでなく、不安や恐怖のために痛みに対する感受性がより高くなったり、歯科医師の説明の理解がおろそかになったりすることも問題となる。また、医科においては、治療に伴う不安を評価するツール(例えば状態-特性不安尺度〔STAI〕)が確立され臨床に役立てられているが、歯科の日常診療で活用できる簡便な評価ツールは存在しない。

 以上を背景として三野氏らは、歯科特異的な不安と恐怖を短時間で評価可能なツールの開発を試みた。他領域で使われている既存の4種類のツール(ビジュアルアナログスケールなど)を基に質問票の草稿を作成し、パイロット研究を実施。その結果、研究参加者の全てが「容易に回答できて感情を示しやすい」と評価した、「ウォン・ベイカー顔面疼痛評価尺度」というツールを利用することとした。この評価尺度は、不安や恐怖の強さを表した6種類の顔のイラストの中から、自分に最もマッチするものを選んでもらうというもの。質問項目により、歯科特性不安(不安を抱きやすい傾向)、歯科状態不安(一過性の不安)、歯科特性恐怖、歯科状態恐怖という4項目を評価可能な質問票とした。いずれもスコアが高いほど、不安または恐怖が強いと判定する。

 この質問票の精度評価のため、岡山大学病院補綴歯科の外来でスケーリング(歯石除去)を受ける47人、およびインプラント治療を受ける25人を対象として実際に利用。医科の臨床で用いられている「状態-特性不安尺度(STAI)」の評価も同時に行い、両者の関連を検討した。またスケーリング群では、最初のスケーリングから2週間後に同様の手順で評価を行い、再現性を検討した。インプラント群では、手術前の説明日と手術当日、および抜糸日の計3時点で評価を行った。

 結果について、まずスケーリング群での再現性に着目すると、加重カッパ係数が0.46~0.67の範囲であり、臨床的に十分と考えられた。STAIとの関連については、多くの指標では有意な正相関が確認された(歯科状態不安および歯科状態恐怖と特性不安の関連は有意水準未満)。

 インプラント群においては、歯科特性不安を除く3指標は評価した3時点間で有意差が観察され、手術前の説明日や手術当日に比べて抜糸日にはスコアが低下していた。また、スケーリング群とインプラント群との比較では、全体的に後者のスコアの方が有意に高かった(歯科特性不安のみ有意差なし)。

 これらの結果から、新たに開発された質問票は、歯科診療特異的な患者の不安や恐怖の強さを、患者自身の特性と歯科治療という状況とに分けて評価できると考えられた。著者らは、「この質問票は簡便に利用でき、臨床における許容範囲内の信頼性と妥当性を有している。歯科診療の個別化に役立ち、また歯科診療に伴う不安や恐怖に関する今後の研究に応用できるのではないか」と述べている。

[2024年10月7日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら