アルツハイマー型認知症(AD)で多くみられる興奮症状は、患者の生活の質や介護者の負担に影響を与える。Fox氏らは中等度~重度のAD患者への有効性が示されているメマンチンの興奮症状に対する効果をプラセボ対照二重盲検比較試験にて検討した。本結果はPLoS One誌オンライン版に2012年5月2日掲載された。
病院またはケアホームから抽出された臨床的に意義のある興奮症状を伴う認知症患者153例のうち、149例を対象にメマンチンとプラセボによる無作為化二重盲検比較試験を実施した。主要評価項目は6週目におけるコーエン・マンスフィールドagitation評価(CMAI)スコアの変化とした。また、副次的評価項目として12週目のCMAIスコア、6週目および12週目の神経精神症状尺度(NPI)スコア、臨床全般印象評価(CGI-C)スコアなどの変化とした。混合効果モデルによる解析。
主な結果は以下のとおり。
・主要評価項目である6週目のCMAIスコア変化は両群間で有意な差が認められなかった(-3.0; -8.3~2.2、p=0.26)。また、副次的評価項目である12週目のCMAIスコア、6週目または12週目のCGI-Cスコアおよび有害事象においても有意な差は認められなかった。
・6週目および12週目の神経精神症状尺度(NPI)スコアの平均値において、メマンチン群で有意な改善が認められた(6週目:-6.9; -12.2~-1.6、p=0.012、12週目:-9.6; -15.0~-4.3、p=0.0005)。
・メマンチン群ではプラセボ群と比較して認知機能の改善に関して有意であった。
・認知症患者の軽度な興奮症状に対するメマンチンの効果については、まだ明らかではない。
(ケアネット 鷹野 敦夫)