イギリス、バーミンガムのHealth Protection Agency Realtime Syndromic Surveillance TeamのAlex J Elliot氏らは、今般の新型インフルエンザ(いわゆる豚インフル、A/H1N1)の、イギリスにおける最初の地域感染を突き止めるため、2つのモニタリング方法について評価を行った。1つは、風邪症状あるいはインフルエンザ症状もしくは両方の症状を有し、NHSの健康電話サービスを利用した患者から同意提供を受けた自己検体からの感染結果。もう1つは、Health Protection Agency(HPA)地方マイクロバイオロジー研究室で、インフルエンザ疑い症例に対する臨床アルゴリズムに従い検査が行われた患者検体からの感染結果である。結果報告は、BMJ誌2009年9月12日号(オンライン版2009年8月27日号)にて掲載されている。
5月末~6月末のイギリス6地域の新型インフル発現動向を調査
評価調査は、2009年5月24日~6月30日に、6つの地域を対象に行われた。主要転帰尺度は、新型インフルエンザと確認されたラボ検体の割合とされた。
結果、新型インフルエンザ(A/H1N1)の感染は、自己検体1,385例からは91例(7%)が見つかった。加えて、インフルエンザA/H3感染が8例、インフルエンザB型感染が2例も見つかった。
NHS健康電話サービス利用増加とラボでの検出増加はぴったりマッチ
自己検体からの感染症例の割合の週ごとの変化は、HPA地方マイクロバイオロジー研究室から報告された感染事例の割合増加とぴったり適合していた。
そして両モニタリング結果の比較から、6月23日~30日の週に地域感染がロンドンとウェスト・ミッドランズで起きていたことが判明した。1ヵ所のHPA地方マイクロバイオロジー研究室からだけで100例以上の新型インフルエンザが見つかり始め、毎週、検体のうち20%以上で陽性が見つかり始めていた。
Elliot氏は、「地域感染の傾向は臨床マネジメントを通じて検知された。その傾向は、NHS電話サービスの利用率とHPAラボで感染が確認された割合を反映していた」と述べ、「HPAラボからの報告だけでは限りがある。それは、渡航歴および既感染者との接触に関する情報が不明だからである。HPAラボからの報告は、地域感染が起きていることを確認するのに用いるべきだろう」とまとめている。