限局性前立腺がんで中等度分化型腫瘍の人に対し保存治療を行った場合、10年以内に前立腺がんが原因で死亡するリスクは、1992年以降のデータでは6%と、それ以前の15~23%に比べ6~7割減少したことが明らかになった。近年、前立腺がんのスクリーニングには、前立腺特異抗原(PSA)が使われているが、PSA検査が普及して以降の限局性前立腺がんの保存的治療のアウトカムに関する研究はほとんど行われていなかった。米国Cancer Institute of New JerseyのGrace L. Lu-Yao氏らが、約9万人の前立腺がん患者について行った、コホート試験の結果で、JAMA誌2009年9月16日号で発表している。
保存療法を受けた中等度分化型腫瘍患者の10年死亡率は9.1%
Lu-Yao氏らは、米国高齢者向け公的保険メディケア加入者データを基に、合計8万9,877人について調査を行った。被験者は、1992~2002年にかけて、ステージ1または2の前立腺がんの診断を受けた65歳以上で、診断から6ヵ月間は手術や放射線療法を行わなかった人だった。追跡は2007年末まで行われ、追跡期間の中央値は8.3年だった。被験者の年齢の中央値は78歳だった。
追跡期間中、10年間に前立腺がんで死亡した人は、高分化型腫瘍のグループでは8.3%(95%信頼区間:4.2~12.8)、中等度分化型腫瘍は9.1%(同:8.3~10.1)、低分化型腫瘍は25.6%(同:23.7~28.3)だった。一方、前立腺がん以外の原因による10年間の死亡率は、それぞれ、59.8%、57.2%、56.5%だった。
PSAテスト普及後、低・中等度分化型腫瘍患者で死亡率改善?
被験者のうち66~74歳で、中等度分化型腫瘍の診断を受けた人が、前立腺がんで10年以内に死亡する確率は、6%(95%信頼区間:4~8)だった。これは、PSAテストが普及する前の1949~92年に診断を受けた同死亡率の15~23%に比べ、60~74%減少していた。死亡率の減少はまた、低分化型腫瘍のグループについても認められた。
Lu-Yao氏は「1992~2002年に診断された患者の臨床転帰は、1970、80年代に診断された患者よりも良好である」としている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)