手根管症候群に対する手術と非手術的治療、どちらが有効?

提供元:ケアネット

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公開日:2009/10/08

 



手根管症候群の治療では、手術、非手術的治療のいずれもが症状の改善効果を示すが、機能の改善効果は手術が優れ、全体としてより良好な転帰をもたらすことが、アメリカWashington大学医学部放射線科のJeffrey G Jarvik氏らが行った無作為化試験で明らかとなった。手根管症候群は最もよくみられる絞扼性末梢神経障害であり、労働不能の主要原因だという。4つの試験の系統的レビューでは、手術のほうが固定法よりも症状の改善効果が高いことが示されているが、特に軽症例においてさらなる検討が望まれていた。Lancet誌2009年9月26日号掲載の報告。

1年後の手の機能、症状を評価




研究グループは、手術のほうが機能および症状の転帰をより改善するとの仮説の下で、脱神経のない手根管症候群患者を対象に手術と集学的な非手術的治療の有用性を比較するパラレルグループ無作為化対照比較試験を行った。

2002年10月~2007年5月までに、8つの施設から116例が登録され、手根管手術を施行する群(57例)あるいはhand therapyや超音波などからなる確立された非手術的治療を行う群(59例)に無作為に割り付けられた。

主要評価項目は、治療12ヵ月の時点において手根管症候群評価質問票(CTSAQ)で評価された手の機能とし、副次評価項目は手の症状などとした。治療の割り付け情報を知らされていない研究者が評価し、intention-to-treat解析が行われた。

機能、症状とも手術群が有意に改善したが、その差の臨床的な意義は大きくない




手術群のうち実際に手術を受けたのは44例(77%)であった。治療12ヵ月の時点で、フォローアップが完遂されたのは101例(87%)であり、手術群が49例、非手術群は52例であった。

治療12ヵ月における手の機能は、手術群でCTSAQスコアの補正アドバンテージが有意に優れた(CTSAQ機能スコア:Δ-0.40、p=0.0081)。症状についても手術群が有意に優れた(CTSAQ機能スコア:0.34、p=0.0357)が、労働への影響、疼痛、QOLは両群間に差を認めなかった。

臨床的に重篤な有害事象は両群ともに見られず、手術に関連した合併症も認めなかった。

著者は、「いずれの治療群でも症状改善効果が認められ、手術群のほうが非手術群に比べ転帰が良好であったが、両群間の差の臨床的意義はそれほど大きくなかった。全体としては、脱神経のない手根管症候群の治療では手術が有用であった」とまとめている。

また、「3ヵ月後には機能、症状ともに手術群の有意な改善効果が確認され1年後まで継続したが、手術群のなかには症状が持続する患者もいた。最終的に、非手術群の61%が手術を受けなかった」としている。

(菅野守:医学ライター)