イギリス、オーストラリア、カナダでは、公的保険対象の医薬品リストへの収載可否については、いずれも医薬品の効果や費用対効果のエビデンスに基づいて決められているものの、それでも各国の承認状況には格差があることが、カナダCalgary大学のFiona M. Clement氏らの調べで明らかになった。先進国では、医療費の中でも医薬品コストの増大が問題となってきている。JAMA誌2009年10月7日号掲載より。
承認率はイギリスNICEが最も高率で87.4%
Clement氏らは、イギリス、オーストラリア、カナダ各国の医薬品保険収載に関する審査機関、National Institute for Health and Clinical Excellence(NICE)、Pharmaceutical Benefits Advisory Committee(PBAC)、Common Drug Review(CDR)のデータを元に、調査を行った。データは、2008年12月時点にそれぞれのウェブサイト上で入手可能だったもので、NICEが2001年2月以降、PBACが2005年7月以降、CDRが2004年1月以降のデータだった。
調査対象期間中の医薬品の申請件数は、NICEが199件、PBACが282件、CDRが121件だった。そのうち承認率は、NICEが87.4%(174件)と最も高率で、次いでPBACが54.3%(153件)、CDRが49.6%(60件)だった。医薬品の効果について、大きな臨床的不確実性を伴う場合の承認率は、PBACとCDRが、NICEに比べて低かった。
大きな臨床的不確実性、CDRとPBACでは申請医薬品の40%を占める
申請された医薬品のうち、大きな臨床的不確実性を伴うと判断されていたものは、CDRとPBACで審査申請医薬品のうち40%超を占めたのに対し、NICEでは27.3%(199件中54件)と低率だった(p=0.009)。
CDRへの申請件数の21.7%、PBACの28.8%では、裏づけとなるデータが無作為化対照試験ではなかったり、また比較対照が不適切な無作為化対照試験だった。また、費用対効果についての指標である、生活の質を考慮に入れた生存年(QALY)が付されていた医薬品は、NICEが最も高率で申請件数のうち96.5%だったのに対し、CDRでは60.0%、PBACでは72.0%だった。
研究グループは、NICE、PBAC、CDRともに、医薬品の承認に関しては、効果や費用対効果に基づく判断をしているものの、それ以外の要因も重要な判断材料となっている場合が少なくないとしている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)