機能性子宮出血、平滑筋腫など良性疾患に対する治療法としては、子宮摘出術が優先的に行われている。しかし一方で、断定的ではないものの子宮摘出による下部尿路へのリスク増加が指摘されてきた。
スウェーデン、カロリンスカ研究所(ストックホルム)のDaniel Altman氏らは、スウェーデン国内女性を対象に、子宮摘出後の腹圧性尿失禁手術のリスクを調査。結果がLANCET誌10月27日号で報告された。
腹圧性尿失禁手術へのリスクを子宮摘出群と非摘出群で比較
本研究対象は、スウェーデン国内の入院患者登録データを集約するSwedish Inpatient Registryの1973年~2003年の間のデータから選定された。
子宮摘出術を受けた165,260例の女性を曝露コホート群として、受けなかった女性479,506例を非曝露コホート群(対照群)とした。出生年と居住地域を照合が行われている。
両コホート群において腹圧性尿失禁手術を受けたか否かは、前述のスウェーデンのSwedish Inpatient Registryで確認された。
摘出群のほうがリスクが高い、特に術後5年以内
観察期間30年の間に、腹圧性尿失禁手術を受けたのは、100,000人年に対し曝露群で179(95%信頼区間:173-186)、対照群は76(同73-79)だった。
それに符合するかのように、曝露群のほうが非曝露群よりも腹圧性尿失禁手術のリスクが手術手技にかかわりなく高かった(ハザード比2.4、95%信頼区間:2.3-2.5)。
またそのリスクの度合いは時間とともに異なっていた。リスクが最も高かったのは術後5年以内(同2.7、2.5-2.9)、反対に最も低かったのは10年以上(同2.1、1.9-2.2)経っていた場合だった。
Altman氏らは、「良性疾患での子宮摘出は、手術手技にかかわりなく、その後の腹圧性尿失禁手術のリスクを増す」と結論づけ、「女性は子宮摘出に関するリスクについてきちんとしたカウンセリングがなされるべきであり、そして、他の治療法が手術の前に考慮されなければならない」と述べている。