認知症が進行した患者は、肺炎、発熱エピソード、食事に関する問題が頻繁に起き、それらが6ヵ月死亡率を高めていることが明らかにされた。アメリカで認知症が主要な死因として増えていることを踏まえ、ボストンにあるHebrew SeniorLife Institute for Aging ResearchのSusan L. Mitchell氏らが、末期病態としての認知症の臨床経過を明らかにすることを目的に、ナーシングホーム入所者で認知症が進行した人を対象に調査を行った。NEJM誌2009年10月15日号より。
認知症が進行した323人と意思決定代理人を18ヵ月間追跡
調査は、ボストン近郊にあるナーシングホーム22施設(いずれも60床以上)に入所する、認知症が進行した323人[中央値86.0歳、女性85.4%、白人89.5%、認知症(アルツハイマー型72.4%)と診断されてから平均6.0年、入所年数3.0年]と、彼らのケアに関する意思決定代理人(health care proxies)を対象に行われた。
被験者は、2003年2月~2007年8月の間に登録され、18ヵ月間の、認知症入所者の生存有無、合併症、症状、治療に関するデータが収集され、代理人が担当認知症入所者に関して予想される予後や合併症について理解しているかどうかを調べた。
認知症末期の入所者の41.1%が肺炎を起こして52.6%に発熱エピソード
結果、18ヵ月間で、54.8%の認知症入所者が死亡した。またこの間に、41.1%が肺炎を起こし、52.6%に発熱エピソードが、85.8%に食事に関する問題があったことが報告された。
年齢、性、罹患期間で補正後、6ヵ月死亡率は、肺炎を併発した人46.7%、発熱エピソードがあった人44.5%、食事に問題があった人38.6%であった。
また被験者には、呼吸困難46.0%、疼痛39.1%といった苦痛を伴う症状が共通して見られた。
死亡前3ヵ月の間には、40.7%が、入院、ER受診、非経口治療、経管栄養療法といった負担の大きな介入を、1つ以上受けていた。ただし代理人が、予後が不良であることや合併症について理解している場合、理解していない場合と比べて、入所者がこれら負担の大きい加入を受けることは低いこともうかがえた(補正後オッズ比:0.12、95%信頼区間:0.04~0.37)。
(医療ライター:朝田哲明)