うつ病や不安障害といったありふれた精神疾患は肥満になりやすいのか、あるいは肥満であることがうつや不安をもたらすのか、相互の関連性については明らかになっていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門のMika Kivimaki氏らは、両者間に用量反応の関係性が存在するのかを調査した。BMJ誌2009年10月17日号(オンライン版2009年10月6日号)より。
オフィス公務員4,363例の4期19年間の、うつと肥満の追跡データを解析
うつと肥満の相互関連性は、1985年に始められたイギリス・ロンドンのオフィス公務員を対象とする前向きコホートスタディ「Whitehall IIスタディ」の参加者(基線時被験者:35~55歳、10,308例)を対象に、「1985~1988年:0期」「1991~1993年:1期」「1997~1999年:2期」「2003~2004年:3期」の4期19年間にわたる、うつ病等および肥満のデータを調べ検討された。
4期にわたるデータが解析されたのは、4,363例(女性28%、基線時の被験者平均年齢44歳)。一般的な健康調査で「事例」として定義されるありふれた精神疾患、およびWHOの過体重、肥満の定義に基づき調査された。
うつがある人には肥満が予測されるが、逆のエビデンスは弱い
年齢、性、基線時BMI値での補正後モデルで、精神疾患がなく肥満だった人と比べて、精神疾患があり肥満だった人のオッズ比は、1期で1.33(95%信頼区間:1.00~1.77)、2期で1.64(1.13~2.36)、3期で2.01(1.21~3.34)だった(傾向のP<0.001)。BMI値との平均差を見ると、1期0.20、2期0.31、3期0.50だった(傾向のP<0.001)。
これらの関連性は、基線時のメンタルヘルスの特徴や基線時に肥満だった人を除外しても変わらず、肥満は将来的な精神疾患リスクを予測し、用量反応の関係性があることが実証された(多変量モデルでの傾向のためのP=0.02)。ただし、この関連は、基線時に精神疾患がない人の場合では弱まった(傾向のP=0.33)。
Kivimaki氏は、「イギリス成人における両者の関係性は、うつなどの精神疾患があると将来肥満になるリスクが高いということを示すものだった。またその関係性は、慢性的あるいは繰り返す精神疾患エピソードがあり体重増加のリスクがある人で累積的に増していた」とまとめている。