130mmol/L未満の低Na血症、積極補正vs.標準ケア

提供元:ケアネット

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公開日:2026/03/10

 

 入院患者の低ナトリウム(Na)血症は、転倒や認知機能障害、死亡のリスク上昇と関連することが知られている。しかし、Na値の補正による臨床アウトカムの改善効果は不明である。そこで、Julie Refardt氏(スイス・バーゼル大学病院/オランダ・エラスムス医療センター)らの研究グループは、Na値の積極的な補正が30日以内の死亡または再入院に及ぼす影響を検討することを目的として、多施設共同無作為化比較試験「HIT試験」を実施した。その結果、慢性低Na血症を有する患者に対し、標的介入による積極的な補正を行っても、標準ケアと比較してリスクは低下しなかった。本研究結果は、NEJM Evidence誌2026年3月号に掲載された。

 本研究は、欧州5ヵ国9施設で実施された。対象は、血漿Na値が130mmol/L未満の慢性の低Na血症を有する18歳以上の入院患者2,173例とした。対象患者は、専門チームによる連日の評価に基づいて原因疾患に応じた段階的な治療(水分制限、経口尿素、トルバプタンなど)を行う標的介入群(1,079例)、主治医の裁量による治療を行う標準ケア群(1,094例)に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日以内の死亡または再入院の複合アウトカムとした。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者の年齢中央値は73歳(四分位範囲[IQR]:63~81)、男性の割合は48%であった。ベースライン時の血漿Na値の中央値は127.0mmol/L(IQR:124.0~128.0)であった。重度の低Na血症(120mmol/L未満)の割合は6.2%であった。
・治療期間中の血漿Na値の最大変化量(平均値±標準偏差)は、標的介入群10.0±5.6 mmol/L、標準ケア群8.7±5.6mmol/Lであった。
・血漿Na値が正常値(135~145mmol/L)に到達した割合は、標的介入群60.4%に対し、標準ケア群46.2%であり、標的介入群が有意に高かった(絶対差14.3%、ハザード比:1.54、95%信頼区間[CI]:1.37~1.74)。
・主要評価項目の30日以内の死亡または再入院の複合の発生は、標的介入群20.5%、標準ケア群21.8%であり、両群間に有意差は認められなかった(推定絶対差-1.3%、95%CI:-4.9~2.2、p=0.45)。
・30日死亡率は両群共に8.0%であった。30日以内の再入院は、標的介入群13.2%、標準ケア群で14.1%であった。
・両群の患者を統合したpost-hoc解析において、退院時に血漿Na値が正常値に到達していた集団は、未到達の集団と比較して30日以内の死亡または再入院の複合のリスクが低かった(オッズ比:0.74、95%CI:0.60~0.91)。
・入院期間中央値は両群共に7日であった。また、退院時および30日時点の神経認知機能評価、QOL、転倒・骨折についても両群間で差はみられなかった。
・過剰補正(24時間で12mmol/L超、または48時間で18mmol/L超の上昇)は標的介入群2.3%、標準ケア群1.4%に観察されたが、両群間に有意差はみられなかった。浸透圧性脱髄症候群はいずれの群でも観察されなかった。

 本研究結果について、著者らは「慢性低Na血症を有する入院患者において、多角的な標的介入による積極的な補正は、標準ケアと比較してNa値の正常化を向上させたものの、30日以内の死亡や再入院といった臨床アウトカムの改善には寄与しなかった」とまとめた。また「本結果は慢性低Na血症を治療しない理由として解釈されるべきではなく、入院中の強化治療が、必ずしも短期的な予後やQOLの改善に結びつかないことを示唆するものである」と考察している。

(ケアネット 佐藤 亮)