米国から最近報告された急性腎障害(AKI)患者に有効とされる透析療法の強度について、オーストラリアとニュージーランドの共同研究グループ(RENAL Replacement Therapy Study)が、高低2つの強度による多施設共同無作為化試験を行い検証した。強度を高めたほうが有益ではないかとの仮説を立てての試験だったが、主要評価項目の90日死亡率に、強度による差はなかったと報告している。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。
40mL/kg体重/時と25mL/kg体重/時とで比較
試験は、2005年12月30日~2008年11月28日の間に、オーストラリアとニュージーランドの35施設のICUから、18歳以上の重症のAKI患者(6時間で尿100mL未満、血清カリウム濃度6.5mmol/L超、pH 7.2未満、プラズマ尿素窒素レベル70mg/dL超、血清クレアチニン値3.4mg/dL超、肺水腫等の所見、のいずれかを満たす)が登録され行われた。
被験者(1,508例)は、後希釈の持続的静静脈血液濾過透析を、高強度で受ける群(40mL/kg体重/時、747例)と、低強度で受ける群(25mL/kg体重/時、761例)に、無作為に割り付けられ追跡された。
主要評価項目は、無作為化後90日以内の死亡とした。
90日死亡率、両群ともに44.7%
主要評価項目に関するデータは、高強度群721例、低強度群743例、計1,464例(97.1%)から得られた。両群の基線時の特徴は同様で、平均治療期間は高強度群6.3日、低強度群5.9日(P = 0.35)。
無作為化後90日以内の死亡は、高強度群322例、低強度群332例で、両群とも死亡率は44.7%で差はなかった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.81~1.23、P = 0.99)。
一方で、90日時点で生存していた人のうち透析療法を継続していたのは、高強度群6.8%(27/399例)だったのに対し、低強度群は4.4%(18/411例)だった(オッズ比:1.59、95%信頼区間:0.86~2.92、P = 0.14)。
低リン酸血症は、高強度群のほうが低強度群に比べて、より多く見られた(65%対54%、P<0.001)。
研究グループは、「重症の急性腎障害患者への透析療法を高強度に行っても、死亡率の低下には結び付かなかった」と結論した。
(武藤まき:医療ライター)