冠動脈バイパス術(CABG)は、体外循環下で施行されてきたが(on-pump CABG)、体外循環を用いないCABG(off-pump CABG)による、人工心肺関連の合併症を減少させる可能性が期待されている。本論は、米国ノースポート退役軍人医療センターのA. Laurie Shroyer氏らの研究グループ(ROOBY Study Group)が行った、約2,200例を対象に両手技を比較検討する無作為化試験からの報告。NEJM誌2009年11月5日号より。
2,203例を無作為割り付け、短期・長期エンドポイントで比較
ROOBY(Randomized On/Off Bypass)試験では、2002年2月から2008年5月に全米18の退役軍人医療センターから登録された、緊急・待機的CABGが予定されていた患者2,203例を、on-pumpまたはoff-pumpの手技に無作為に割り付け追跡した。
短期主要エンドポイントは、退院前または術後30日以内の死亡・合併症(再手術、新規の機械的補助、心停止、昏睡、脳卒中、腎不全)の複合とした。長期主要エンドポイントは、術後1年以内の全死因死亡・再血行再建術・非致死的心筋梗塞の複合とし、2次エンドポイントは、血管再建の完全性、1年時点のグラフト開存率、神経心理学的アウトカム、主要な医療資源の利用とした。
複合アウトカム、短期的には有意差なし、1年時点はon-pump群が勝るが……
30日後の複合アウトカム発生率は、on-pump群7.0%、off-pump群5.6%で、有意差は認められなかった(P = 0.19)。1年時点の同発生率は、on-pump群7.4%、off-pump群9.9%で、off-pump群の方が高かった(P = 0.04)。
しかしoff-pump群の方がon-pump群より、グラフト手技が当初予定より少数で完了した患者の比率が高かった(17.8%対11.1%、P<0.001)。
また1,371例の患者に移植された4,093本のグラフトのフォローアップ撮影画像から、全体のグラフト開存率は、off-pump群の方がon-pump群より低いことが確認された(82.6%対87.8%、P<0.01)。さらに神経心理学的アウトカムあるいは主要な医療資源の短期使用量については、両手技間に差は認められなかった。
Shroyer氏は、「1年時点の追跡結果では、複合アウトカムとグラフト開存率において、off-pump群の患者はon-pump群より劣っていた。神経心理学的アウトカムあるいは主要な医療資源の利用量については、両手技間に有意差は確認されなかった」とまとめている。
(医療ライター:武藤まき)