産学連携(Institutional Academic-Industry Relationships:IAIR)は、組織内に利害対立をも引き起こす可能性をはらんでいる。しかしこれまで、大学および教育病院と産業界との関係を管理する方針や手法に関して確立・評価するのに役立つ観察データは示されていなかった。そこで医学部と教育病院の産学連携の性質、範囲そして影響について、学部教授を対象とした全国調査がマサチューセッツ総合病院のEric G. Campbell氏らによって行われ、その結果がJAMA誌2007年10月17日号に掲載された。
教授職の6割が産業界と何らかの個人的関係を持つ
125の逆症療法を主体とする医学部と15の独立系教育病院の学部教授を対象とした全米調査は、2006年2月から同年10月にかけて実施された。主要評価項目は産業界とのつながりのタイプ。対象となった学部教授職688例のうち459例について調査を完了、回答率は全体の67%だった。
学部教授職の60%は産業界との間に何らかの個人的なつながりを持っており、その内訳は、コンサルタント(27%)、学術顧問(27%)、有給講演者(14%)、役員(7%)、設立発起人(9%)、または重役会メンバー(11%)などとなっていた。
また、学部単位では3分の2に当たる67%が産業界との関係があった。
この中で臨床系学部は非臨床系学部よりも、研究装置(17%対10%、P=0.04)、無制限の資金提供(19%対3%、P<0.001)、実習医や特別研究員の教育援助(37%対2%、P<0.001)、さらに平均的教育の継続的サポート(65%対3%、P<0.001)などを受け取っていることが見受けられた。
一方、非臨床系は、知的財産権のライセンスにおいて臨床系よりも多くの資金提供を受けていた(27%対16%、P=0.01)。
企業との関わりが研究の独立性を損なうおそれも
学部教授職の3分の2は「業界とのつながりが専門の研究活動に影響を及ぼすことはない」とする一方、1つでも企業活動(ベンチャー企業のコンサルティングや重役といった重要な地位を務めるなど)に関わることは、独立したバイアスのかからない研究を遂行する学部能力には負の影響を及ぼすだろうとの見解も示していた。
研究グループは、産学連携があまりにも一般的になりすぎている現状を指摘し、その上で「本調査は、積極的な情報開示と適切な管理手法の必要性を提起するものだ」と結論づけた。
(朝田哲明:医療ライター)