日本では白血病の抗がん剤としてのみ承認されている免疫抑制薬クラドリビン(商品名:ロイスタチン)は、リンパ球サブタイプを選択的に標的とする特徴を有する。ロンドン大学クイーンズ・メアリー校のGavin Giovannoni氏ら「CLARITY」研究グループは、再発寛解型多発性硬化症患者への有効性を評価する、第III相試験である短期コース経口療法の96週間(24ヵ月間)の結果を報告した。NEJM誌2010年2月4日号より。
再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に
研究グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが5.5以下で、過去1年間に1回以上の再発を経験した再発寛解型多発性硬化症患者1,326例を対象に無作為化試験を行った。
被験者は、経口クラドリビンを累積投与量で3.5mg/kg体重投与される群、同5.25mg/kg体重投与される群、またはプラセボを投与される群に1:1:1となるよう割り付けられた。
試験期間96週のうち、最初の48週での投薬は4コース(クラドリビン3.5mg/kg群は2コース+プラセボ2コース)行われた(投薬日数計8~20日間/年)。その後の48週以降に2コース(48週時点と52週時点)投与が各群に行われた(プラセボ群にはプラセボ投与、他の2群にはクラドリビン投与)。
主要エンドポイントは、96週時点での再発率とした。試験を完了したのは1,184例(89.3%)、解析はintention-to-treatにて行われた。
3.5mg群、5.25mg群とも再発率・障害進行とも有意に低下、ただし有害事象も高頻度
クラドリビン投与群はいずれの用量群も、年間再発率がプラセボ群より有意に低下した。それぞれ3.5mg群0.14、5.25mg群0.15、プラセボ群0.33だった(両比較ともP<0.001)。
無再発率もクラドリビン両投与量群が高かった(それぞれ79.7%と78.9%対60.9%、両比較ともP<0.001)
また3ヵ月時点の障害進行リスクも、クラドリビン両投与量群が低値を持続した。各群のプラセボに対するハザード比は、3.5mg群0.67(95%信頼区間:0.48~0.93、P=0.02)、5.25mg群は0.69(同:0.49~0.96、P=0.03)。MRI評価による脳病変数も有意な低下がみられた(全比較P<0.001)。
一方でクラドリビン群では、リンパ球減少(3.5mg群21.6%、5.25mg群31.5%に対しプラセボ群1.8%)、帯状疱疹(3.5mg群8例、5.25mg群12例、プラセボ群0例)などの有害事象の頻度が高かった。
以上から研究グループは、「クラドリビン治療はプラセボと比較して、96週時点の再発率、障害進行リスクならびにMRI評価指標を有意に改善した」と結論したうえで、「ベネフィットについては、有害事象のリスクと比較しつつ吟味する必要がある」とまとめている。
(医療ライター:朝田哲明)