先天性心疾患を有する新生児には発育上の全般的な機能障害がみられる。カリフォルニア大学神経学学部のSteven P. Miller氏らのグループは、先天性心疾患のある新生児について、脳の成熟度を示す尺度となる脳代謝とミクロ構造の特徴に関して、心臓手術前の時点で対照新生児との検討を行った。NEJM誌2007年11月8日号より。
脳成熟度の4指標について対照群と比較
研究グループは、磁気共鳴画像法(MRI)、MRスペクトロスコピー(MRS)、拡散テンソル画像法(DTI)を用いて、先天性心疾患を有し心臓手術を予定している満期産新生児41例に対し調査を行った。29例は大血管転位症、12例は(生理学的)単心室(症)を伴っていた。
脳の成熟度を示す指標として、
N-アセチルアスパラギン酸/コリン比(脳の成熟に伴って増加)、乳酸/コリン比(成熟とともに減少)、平均拡散率(成熟とともに減少)、白質路の異方性比率(成熟とともに増加)の4つについて算出した。これらの所見を在胎月齢が同等の対照群16例と比較した。
先天性心疾患群の32%に白質損傷を観察
先天性心疾患群は対照群と比較して、
N-アセチルアスパラギン酸/コリン比は10%低く(P = 0.003)、乳酸/コリン比は28%高く(P = 0.08)、平均拡散率は4%高く(P<0.001)、白質路の異方性比率は12%低かった(P<0.001)。
MRI画像上で認められるような手術前脳損傷と、MRSまたはDTI所見には有意な関連は認められなかった。
白質損傷は先天性心疾患群の13例(32%)で観察されたが、対照群では認められていない。
これらから研究グループは、先天性心疾患を有する満期産新生児は心臓手術を受ける前に広範囲にわたる脳異常を呈していること、そのような画像所見は早産新生児のそれと類似しており、子宮内での脳発達異常を反映している可能性があると提起している。
(朝田哲明:医療ライター)