職場介入と運動療法の統合的治療、慢性腰痛患者の職場復帰に有効

提供元:ケアネット

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公開日:2010/04/16

 



上司を交えた職場への介入と段階的な運動療法から成る統合的治療プログラムは、慢性腰痛患者の機能障害を軽減し職場復帰に有効なことが、オランダVU大学医療センターのLudeke C Lambeek氏らの検討で示された。慢性腰痛は、臨床的な問題であるとともに心理社会的かつ仕事関連の問題でもある。慢性腰痛の臨床ガイドラインは労働不能(work disability)に焦点を当てているが、通常の腰痛治療はその予防を目的としたものではない。職場の要素をも考慮した介入が、亜急性の腰痛が原因と診断された患者の職場復帰に有効なことが示されているが、慢性腰痛に対する効果を検討した試験はなかったという。BMJ誌2010年4月3日号(オンライン版2010年3月16日号)掲載の報告。

通常治療と統合的治療を比較する地域住民ベースの無作為化対照比較試験




研究グループは、慢性腰痛患者に対する直接的介入と職場への介入を併用した統合的治療プログラムの効果を評価する地域住民ベースの無作為化対照比較試験を行った。

12のプライマリ・ケア施設および5つの2次医療施設から、腰痛のため12週以上患者リストに載っている18~65歳の患者134例が登録され、通常治療群(68例)あるいは統合的治療群(66例)に無作為に割り付けられた。

統合的治療とは、上司を交えた参加型人間工学(participatory ergonomics)に基づく職場介入および認知行動学に基づく段階的運動プログラムから成るもの。

主要評価項目は、十分に継続可能な職場復帰までの、腰痛による休業期間であり、副次評価項目は疼痛および身体機能の程度とした。

職場復帰までの期間が、1年間のフォローアップ期間中に120日も短縮




継続可能な職場復帰までの期間(中央値)は、統合治療群が88日と、通常治療群の208日に比べ有意に短縮された(p<0.003)。Kaplan-Meier法による解析では、職場復帰までの期間は統合的治療が有意に優れた(ハザード比:1.9、p=0.004)。

12ヵ月後のRoland機能障害質問票による評価では、統合的治療群で身体機能が有意に改善された(p=0.01)。視覚アナログスケールによる疼痛の評価では、両群間に差を認めなかった。

著者は、「患者と職場環境に直接介入する統合的治療プログラムは、腰痛による機能障害を私生活および労働生活の双方において実質的に低減した。労働活動への早期復帰は、疼痛には有効でも有害でもなかった」と結論し、「本試験の知見は、疼痛と労働不能とは、別個の治療目標であることを示している」と指摘する。

(菅野守:医学ライター)