ボストン大学全米新興感染症研究所のThomas W Geisbert氏らは、致死性のザイールエボラウイルス(ZEBOV)に感染したアカゲサル(マカク属)のモデルを使った実験的治療で、RNA干渉を引き起こすsiRNA(small interfering RNAs)治療が有効であったことを報告した。Lancet誌2010年5月29日号掲載より。同治療の有効性は、マウスを使った実験的治療で確認されていた。siRNA治療は、安定核酸脂質分子(SNALPs)に調製したsiRNAを、ZEBOVのRNAポリメラーゼLたんぱく質をターゲットに投与するというもの。
3つの蛋白質をターゲットにした混合siRNAを4回もしくは7回投与
Geisbert氏らは、マウスで有効だった本治療について、ヒト以外の霊長類での有効性を評価することを目的に実験的治療を行った。
投与されたのは、ZEBOVのRNAポリメラーゼL(EK-1 mod)、およびウイルスタンパク質(VP)24(VP24-1160 mod)、VP35(VP35-855 mod)をターゲットしSNALPs化された混合siRNA。第1試験のサル群(3例)に本剤を1回2mg/kgボーラス静注で、ZEBOV曝露後、30分、1、3、5日後にそれぞれ投与した。第2試験のサル群(4例)には、同剤を、曝露後、30分、1、2、3、4、5、6日後に投与した。
曝露直後の7回投与が治療戦略として有効か
4回投与の第1群は、プロテクトされたのは3例のうち2例(66%)だった。一方、7回投与の第2群は、全例プロテクトに成功した。第2群は、ウイルス感染に関連する肝酵素の値の変化も軽度で、治療としての忍容性が高いことも確認された。
Geisbert氏は、「今回の結果、本治療戦略がヒトにおいても有効である可能性が示された。また、他の新生ウイルス感染の治療戦略としての可能性も示唆されたと言える」と結論している。
(朝田哲明:医療ライター)