本報告は、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の抑制が血漿リポ蛋白レベルに重要な影響を及ぼすことが示され開発が進められていた、CETP阻害薬torcetrapib(2006年12月開発中止)の臨床試験ILLUMINATEの結果。NEJM誌オンライン版11月5日付け、本誌11月22日号で掲載された。強力なCETP阻害薬torcetrapibが重大な心血管イベントを減少させるかどうかについて調査された本治験は、結果として投与を受けた患者の死亡リスクと心イベントが増加したため早期に中止された。
HDL-Cの増加とLDL-Cの減少は有意も血圧上昇を伴う
ILLUMINATEは、心血管リスクの高い15,067例の患者を対象とする無作為化二重盲検試験。患者はtorcetrapib+アトロバスタチンの併用、またはアトロバスタチン単独のいずれかに割り付けられた。主要評価項目は最初の重大な心血管イベントまでの期間とした。重大な心血管イベントとは、虚血性心疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院と定義された。
12ヵ月時点で、torcetrapibを投与された患者はベースラインと比較して、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)が72.1%上昇、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)は24.9%低下(P<0.001)していた。加えて収縮期血圧5.4 mm Hg上昇、血清カリウムは低下し、血清ナトリウム、重炭酸塩、アルドステロンは上昇していた(P<0.001)。
メカニズム不明の死亡リスク増が明らかに
心血管イベントリスク(ハザード比1.25、95%信頼区間:1.09~1.44、P=0.001)、全死因死亡リスク(同1.58、1.14~2.19、P=0.006)も増加した。事後解析の結果から、torcetrapib投与群のカリウム低下または重炭酸塩上昇が中央値より高かった患者で死亡リスクが増加していたことが明らかとなった。
研究グループは、「torcetrapib投与で死亡リスク、罹患率は増加した。ただしそのメカニズムは不明である」と述べ、「torcetrapibの予期しない作用効果のエビデンスは得られたが、CETP抑制に関連する有害作用を除外することもできなかった」と結論づけた。