慢性骨髄性白血病の分子標的治療薬イマチニブ(商品名:グリベック)は、白血病細胞の原因となるBCR-ABL蛋白を阻害し作用を発揮する。ニロチニブ(商品名:タシグナ)は、イマチニブよりも強力かつ選択的にBCR-ABLを阻害するとして、イマチニブ抵抗性あるいは不耐容の慢性期および移行期のCML患者に対する治療に有用とされている。イタリア・トリノ大学のGiuseppe Saglio氏らの治験グループ「ENESTnd」は、ニロチニブの第3相試験として、初発の慢性期のフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(Ph+ CML)患者を対象に、イマチニブとの直接比較で有効性と安全性の評価を行った。NEJM誌2010年6月17日号(オンライン版2010年6月5日号)より。
分子遺伝学的寛解率はおよそ2倍
非盲検多施設共同で実施された第3相試験は、846例のPh+ CML患者を、ニロチニブ1日2回300mg投与群、または同400mg投与群、もしくはイマチニブ1日1回400mg投与群に、 1:1:1の比率で無作為に割り付け行われた。
プライマリーエンドポイントは、12ヵ月時点の分子遺伝学的Major寛解(MMR)率とした。
試験の結果、投与後12ヵ月時点のMMRは、ニロチニブ群(300mg投与群44%、400mg投与群43%)で、イマチニブ群(22%)のおよそ2倍だった(両群間比較ともP<0.001)。
完全寛解率、病期進行抑制でもニロチニブが優位
12ヵ月時点でのフィラデルフィア染色体が検出されない状態を示す細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)率は、イマチニブ群(65%)よりニロチニブ群(300mg投与群80%、400mg投与群78%)が有意に高かった(両群間比較ともP<0.001)。ニロチニブ両投与群の患者は、移行期または急性転化までの期間が、イマチニブ投与群よりも有意に改善された(300mg群P = 0.01、400mg群P = 0.004)。病期が移行期に進んだり急性転化した患者は、MMRを達成しなかった。
消化器症状および体液貯留はイマチニブ投与群で頻度が高かった。皮膚症状、頭痛はニロチニブ投与群でより頻度が高かった。アミノトランスフェラーゼとビリルビン上昇による投与中止は3群とも低かった。
これらの結果から研究グループは、1日2回 300mgまたは400mg投与のニロチニブは、初発のPh+ CML患者に対する効果においてイマチニブより優れていると報告した。
(医療ライター:朝田哲明)