志向する専門キャリアを卒後すぐに積み上げることは難しい状況にあることが、英国オックスフォード大学公衆衛生学部UKメディカルキャリア研究グループのMichael J Goldacre氏らの調査で明らかになった。1974~1996年の間に医師となった1万5千人超の、卒後10年間に選択してきた専門キャリアと最終的に目指す専門キャリアについてアンケート調査を行った結果、約4分の1の医師の10年時点の就業している専門が、卒後1~3年の選択キャリアとは異なっていた。調査対象期間に英国では、より高い専門性を短期で身につけることを目的とした卒後研修プログラムの改革が行われてきたが、改革プログラムの効果はみられなかったという。BMJ誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載より。
医師1万5千人超の、卒後10年間の経年専門キャリアと目標専門キャリアを調査
調査はアンケート形式で行われ、1974、1977、1983、1993、1996年に医師免許を取得した合計1万5,759人の、卒後10年のキャリアを調査した。
卒後1、3年時点のキャリアについては1万5,759人全員を対象に、卒業5年時点については1万2,108人を対象に調査された。
各時点のキャリアが把握できたのは、1年時点64%(n=1,0154)、3年時点62%(n=9,702)、5年時点61%(n=7,429)だった。
最終目標と経年選択キャリアとの一致率、1年時54%、3年時70%、5年時83%
1993、1996年のコホート群の、10年時の目標キャリアとの一致率は、1年時選択キャリアとは54%(1,890/3,508人)、3年時とは70%(2,494/3,579人)、5年時とは83%(2,916/3,524人)だった。
上の年代のコホート群(1974、1977、1983年)についても、一致率は同様で、それぞれ、53%(3,310/6,264人)、74%(4,233/5,752人)、82%(2,976/3,646人)だった。
ただし、たとえば外科の一致率は一貫して高いなど、専門別による一致率の違いが認められた。
1年時選択専門キャリアと最終目標専門キャリアが一致していた医師のうち74%(722/982人)は、卒後1年目に明確に(未確実、不確定よりは強く)、希望する専門を有していた。しかし約半数が、病院の専門部門で働くことを希望したものの結局はかなわず、10年時点まで一般診療所(GP)で働いていた。
結果を受けGoldacre氏は、「卒後研修は希望する専門を確実に受けられるという前提を有し、明確な専門選択を有したら速やかにその専門キャリアを積める。一方で、後から選択した人も学べるという柔軟性のあるものに一刻も早くしなければならない」と結論している。