HDL-C低値は、心血管疾患の治療ターゲットか?:JUPITER試験サブ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2010/08/12

 



HDLコレステロール(HDL-C)値の測定は、初回心血管疾患のリスクの評価には有用だが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではないことが、アメリカ・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったJUPITER試験のサブ解析で明らかとなった。HDL-C値は心血管イベントの発症と逆相関を示す。スタチンは心血管疾患の治療薬として確立されているが、スタチン治療を行ってもなお残存する血管リスクはHDL-C値が低いことである程度説明でき、HDL-Cの不足は治療ターゲットとなる可能性が指摘されている。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。

JUPITER試験のエンドポイントを、HDL-C値の四分位に分けて解析




研究グループは、高用量スタチン治療でLDL-C値が著明に低下した患者においても、HDL-C値と心血管イベントの発症とは逆相関の関係を示すかについて解析を行った。

JUPITER試験の対象は心血管疾患の既往歴のない非糖尿病の成人で、ベースライン時のLDL-C値<3.37mmol/L、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)値≧2mg/Lの者であった。これらの参加者が、ロスバスタチン20mg/日を投与する群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられた。

今回の解析では、対象をHDL-C値とアポリポ蛋白A1値の四分位に分けて、JUPITER試験の主要評価項目である非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建術、心血管死について評価した。

ロスバスタチン群では、HDL-C値と血管リスクは関連しない




17,802例を対象とした主解析では、エンドポイントの発現率はロスバスタチン群がプラセボ群に比べ44%低下した(p<0.0001)。

プラセボ群[8,901例(50%)、治療時のLDL-C中央値2.80mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:0.54、95%信頼区間:0.35~0.83、p=0.0039)および治療時(同:0.55、同:0.35~0.87、p=0.0047)ともに有意な逆相関を示した。

これに対し、ロスバスタチン群[8,900例(50%)、治療時のLDL-C中央値1.42mmol/L]では、HDL-C値と血管リスクはベースライン時(四分位の最低値群に対する最高値群のハザード比:1.12、95%信頼区間:0.62~2.03、p=0.82)および治療時(同:1.03、同:0.57~1.87、p=0.97)ともに有意な関連はなかった。

アポリポ蛋白A1値は、プラセボ群ではエンドポイントの発現率と強い相関を示したのに対し、ロスバスタチン群では関連はほとんど認めなかった。

著者は、「HDL-C値の測定は初回心血管疾患のリスクの評価には有用であるが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではない」と結論したうえで、「現在までのところ、この仮説を支持する有望なデータはないが、コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬などには可能性が残っているため、無作為化試験で検証する必要があるだろう」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)