卵円孔開存の存在と原因が特定できない潜因性脳卒中との関連は明らかだが、先行研究は55歳未満の若年患者に関するもので、55歳以上の高齢患者についての関連は明らかとなっていない。
そこでフライブルグ大学病院(ドイツ)循環器科のMichael Handke氏らは、高齢患者でのエビデンスを求める検証を行った。NEJM誌11月29日号より。
18~85歳までの連続症例を検討
対象は、2001年1月~2002年4月の16ヵ月間にフライブルグ大学病院の脳卒中ユニットあるいは神経系ICUに入院した18~85歳までの連続症例。脳卒中を発症した509例(潜因性脳卒中227例、原因が特定された脳卒中276例)が前向きに比較検討された。
全例に対して経食道心エコーを用い、卵円孔開存の有病率と心房中隔瘤を伴う卵円孔開存の有病率が調べられ、また、55歳未満患者(131例:若年患者群)と55歳以上患者(372例:高齢患者群)との比較も行われた。
若年・高齢とも潜因性脳卒中患者群で有意に高い
卵円孔開存の有病率は若年・高齢患者群とも同様の傾向、すなわち脳卒中の原因が特定された患者群(対照群)より潜因性脳卒中患者群のほうが有意に高いという結果が示された。若年患者群ではオッズ比4.70(43.9%対14.3%、95%信頼区間:1.89~11.68、P<0.001)、高齢患者群ではオッズ比2.92(28.3%対11.9%、同1.70~5.01、P<0.001)。
心房中隔瘤を伴う卵円孔開存の有病率に関する相関も同様の傾向を示し、若年患者群ではオッズ比7.36(13.4%対2.0%、同1.01~326.60、P=0.049)、高齢患者群ではオッズ比3.88(15.2%対4.4%、同1.78~8.46、P<0.001)だった。
多変量解析(年齢、プラクー厚、冠動脈疾患および高血圧の有無で補正後)の結果、卵円孔開存の存在と潜因性脳卒中との関連が、若年患者群(オッズ比3.70、95%信頼区間:1.42~9.65、P=0.008)、高齢患者群(オッズ比(3.00); 95%のCI(1.73~5.23); P<0.001)それぞれで独立していることも認められた。
高齢患者群でも卵円孔開存の存在と潜因性脳卒中との関連が認められたことを受け、Handke氏らは、「奇異性塞栓症は若年・高齢双方における脳卒中の一因であることを示唆するものだ」と結論づけた。
(武藤まき:医療ライター)