イタリア北東部におけるチクングニアウイルス集団感染報告

提供元:ケアネット

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公開日:2007/12/13

 

チクングニアウイルスはヤブ蚊類(Aedes spp)の媒介によってヒトに感染する。1953年、タンザニアで単離されたのち、散発的な感染例や集団感染がアフリカ諸国、インド亜大陸、東南アジアから報告されている。数年前に西インド洋域のアフリカの島々など広範な地域で流行して以来、温帯地域の先進諸国からの旅行者が感染して帰国する例が多発している。日本では、昨年12月、一時帰国中のスリランカ在住の30歳代の日本人女性の感染が判明、国内で確認された初めての感染例とされる。
 イタリア高等厚生研究所のG. Rezza氏らは、イタリア北東部地域で発生したヒトスジシマカ(Aedes Albopictus)の媒介によると思われる集団感染について報告した。Lancet誌12月1日号から。

原因不明の発熱性疾患が集団発生




イタリア北東部の隣接する2つの村で原因不明の発熱性疾患が集団発生したため、感染源および伝搬様式を確定するための調査が行われ、積極的疫学調査(active surveillance system)が実施された。

症状の定義は発熱および関節痛の発現とした。血液サンプルはPCR法で解析し、病原体を同定するための血清学的検査を実施した。現地で捕獲された蚊もPCRで検査し、チクングニアウイルスの系統発生解析を行った。

病態はほぼ全例がごく軽度




ヒトおよび蚊のサンプルの解析から、チクングニアウイルスの集団感染が判明した。2007年7月4日~9月27日までに205例を確認した。感染源は村のひとつに在住する親戚を訪問中に症状の発現をみたインド人男性と推定された。

系統発生解析では、イタリアでみつかったウイルス株とインド洋の島々での集団発生時に同定された株が類似することが示された。病態はほぼ全例がごく軽度で、死亡例は1例のみであった。

研究グループは、「今回の非熱帯地域におけるチクングニアウイルスの集団感染は予測不能な面がある」としたうえで、「グローバリゼーションの時代においては、未経験の感染症の脅威に対する備えと対応策が重要」と警告している。

(菅野 守:医学ライター)