大人のADHD患者には、服薬治療とともに認知行動療法を

提供元:ケアネット

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公開日:2010/09/07

 



注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、成人においてもみられるようになっている。成人期ADHDは薬物療法だけでの治療は難しく、一方で心理社会的治療のエビデンスは十分ではない。そこで米国マサチューセッツ総合病院のSteven A. Safren氏らは、認知行動療法の有効性を検討する無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月25日号より。

認知行動療法かリラクセーション法を受けてもらい追跡




研究グループは、薬物療法を受けているが臨床症状が改善していないADHD成人患者86例を対象に、認知行動療法の有効性を評価する無作為化比較対照試験を行った。被験者は、認知行動療法または問題行動に対して教育的支援で行動修正を図っていくリラクセーション法のいずれかの治療を受ける群に無作為化され、12回の個別セッションを受けた。

試験は2004年11月から2008年6月(追跡調査は2009年7月まで)にかけて実施された。無作為化された86例のうち治療を完了したのは79例、追跡評価まで完了したのは70例だった。

主要評価項目は、ベースライン時、治療後、6~12ヵ月時点でのADHD症状(ADHD評価スケールとClinical Global Impressionスケールによる)とされた。なお評価者には、どちらの治療を受けたかは知らされなかった。副次評価項目は、ADHD症状の自己報告とした。

認知行動療法の方がADHD症状を改善




認知行動療法群の治療後スコアは、リラクセーション法群と比較して、Clinical Global Impressionスケール(-0.0531、95%信頼区間:-1.01~-0.05、P=0.03)、ADHD評価スケール(-4.631、95%CI -8.30~-0.963、P=0.02)のいずれも低かった。

治療全体を通して、自己申告による症状は、認知行動療法群がより有意に改善されていた(β=-0.41、-0.64~-0.17、P<0.001)。Clinical Global Impressionスケール(53%対23%、オッズ比:3.80、95%信頼区間:1.50~9.59、P=0.01)、ADHD評価スケール(67%対33%、オッズ比:4.29、95%信頼区間:1.74~10.58、P=0.002)についてもより改善が認められた患者が多かった。

認知行動療法を受けたことによる効果は、6ヵ月、12ヵ月時点でも維持されていた。

研究グループは、「服薬治療中の持続性ADHD成人患者に対しては、教育的支援を伴うリラクセーション法よりも認知行動療法を行うことの方が、ADHD症状を改善し持続することに結びつく」と述べている。

(朝田哲明:医療ライター)