分子標的薬としてのエベロリムスの多発性嚢胞腎への効果は?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/09/08

 



本邦では免疫抑制薬(商品名:サーティカン)、分子標的薬としては腎細胞がんへの抗がん薬(商品名:アフィニトール)として製剤が承認されているエベロリムスの、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する有効性を検討した試験の結果が報告された。ドイツ・フライブルグ大学病院のGerd Walz氏らによる。ADPKDは緩徐に進行する遺伝性疾患で、ほとんどが末期腎不全に至る。数年前に、遺伝子突然変異が基因にあることが同定されたが、嚢胞肥大を抑え腎不全を予防するための有効な治療法は開発されていない。そうした中、嚢胞肥大に哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)が重要な役割を演じていることが示唆されたことから、mTORを選択的に阻害する分子標的薬としてのエベロリムスに期待が寄せられた。NEJM誌2010年8月26日号(オンライン版2010年6月26日号)より。

主要転帰は基線から12ヵ月、24ヵ月時点までの総腎容積の増加




プラセボとの対照で有効性を検討した無作為化二重盲検試験は、433例のADPKD患者を対象に、2年間にわたって実施された。

主要転帰は、MRI測定による、基線から12ヵ月時点、24ヵ月時点までの総腎容積の変化とした。

結果、12ヵ月時点までの総腎容積の変化は、エベロリムス群102mL増加、プラセボ群は157mL(P=0.02)の増加だった。24ヵ月時点までについては、それぞれ230mL、301mLの増加だった(P=0.06)。

肥大は緩徐となるも腎機能障害進行は緩徐とはならず




また、嚢胞容積については、12ヵ月時点まではエベロリムス群が76mL、プラセボ群が98mLの増加で(P=0.27)、24ヵ月時点まではそれぞれ181mL、215mLの増加だった(P=0.28)。

腎実質容積は、12ヵ月時点まではエベロリムス群が26mL、プラセボ群が62mLの増加で(P=0.003)、24ヵ月時点まではそれぞれ56mL、93mLの増加だった(P=0.11)。

24ヵ月時点の推定糸球体濾過量の平均減少量は、エベロリムス群が8.9mL/分/1.73m2、プラセボ群は7.7mL/分/1.73m2であった(P=0.15)。薬剤特異的有害事象はエベロリムス群でより多くみられたが、感染症の発生率は2群とも同程度だった。

以上の結果を踏まえ研究グループは、「エベロリムスはプラセボとの比較で、ADPKD患者の総腎容積の増加は緩徐となったが、腎機能障害の進行は緩徐とはならなかった」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)