BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子(以下、BRCA1/2遺伝子)変異キャリアに対する、がん発症リスク減少を目的とする乳房切除術の実施は乳がん発症を低下すること、同目的の卵管卵巣摘出術の実施は、卵巣がん、初発乳がん、全死亡、乳がん死亡、卵巣がん死亡のリスクを低下することが明らかにされた。米国ペンシルバニア大学医学部アブラムソンがんセンターのSusan M. Domchek氏らが、約2,500人のBRCA1/2遺伝子変異キャリアを対象に行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月1日号で発表した。
乳房切除術群で乳がん発症はなし、非切除群では7%
研究グループは、1974~2008年にかけて、ヨーロッパと北アメリカにある22ヵ所の臨床・研究遺伝子センターで、
BRCA1/2遺伝子変異キャリアの診断を受けた女性2,482人について、2009年まで追跡を行った。
主要アウトカムは、乳がん・卵巣がんの発症リスク、がん死亡率と全死亡率とした。
追跡期間の平均値は、手術を行った群で3.65年、行わなかった群で4.29年だった。
結果、がん発症リスク減少目的の乳房切除術を行った247人のうち、乳がんを発症した人はいなかったのに対し、行わなかった1,372人のうち乳がんを発症したのは98人(7%)いた。
卵管卵巣摘出術の実施で、卵巣がん発症リスクは0.14倍に
また、がん発症リスク減少目的の卵管卵巣摘出術を行った群では、行わなかった群に比べ、同がん発症リスクが有意に減少した。
乳がんの診断を受けた人で卵管卵巣摘出術を行った人の、卵巣がん発症率は1%だったのに対し、行わなかった人では6%だった(ハザード比:0.14、95%信頼区間:0.04~0.59)。
また乳がんと診断されていなかった人で卵管卵巣摘出術を行った人の、同発症率は2%だったのに対し、行わなかった人では6%だった(ハザード比:0.28、同:0.12~0.69)。
BRCA1遺伝子変異キャリアで卵管卵巣摘出術を行った人が、初発の乳がんを発症するリスクは14%だったのに対し、行わなかった人では20%だった(ハザード比:0.63)。
BRCA2遺伝子変異キャリアでは、それぞれ7%と23%だった(ハザード比:0.36)。
さらに、がん発症リスク減少目的の卵管卵巣摘出術を行った人は、行わなかった人に比べ、全死亡率、乳がん死亡率、卵巣がん死亡率いずれも、大幅に減少した(それぞれのハザード比:0.40、0.44、0.21)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)