認知症患者家族への介入で、患者の4ヵ月後アウトカムが良好に:COPE試験

提供元:ケアネット

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公開日:2010/09/14

 



居宅認知症患者の家族介護者に対し、OT(作業療法士)などによる訪問指導を頻繁に行い、患者の機能状態等に合わせた家庭環境に改善する介入を行うことで、介入を行わなかった群に比べ、4ヵ月後のアウトカムは、良好になることが明らかにされた。米国トーマス・ジェファーソン大学ジェファーソン加齢・健康研究センターのLaura N. Gitlin氏らが、200例超の認知症患者・家族について行った、前向き無作為化比較試験COPE(Care of Persons with Dementia in their Environments)の結果で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月1日号で発表した。COPE試験は、認知症患者の機能低下を引き延ばす手段が確立していないことを受け、患者の能力に見合った再調整という非薬物的介入の効果を検討することが目的の試験。

家族に対し、OTが4ヵ月で10回訪問指導、看護師が2回コンサルテーション




研究グループは、2006年3月~2008年6月にかけて、ペンシルベニアの居宅認知症患者とその家族介護者(同居家族)を対象に試験を開始した。被験者家族を無作為に2群に分け、一方の介入群(COPE群)には、4ヵ月の間、10回にわたるOTによる訪問指導と、開業看護師による2回のコンサルテーション(訪問1回、電話コンサル1回)を行った。

OTは、患者の能力評価と、家族から毎日の生活パターンなどの聞き取り調査を行った上で、家族介護者に、患者が安全でストレスが少なく生活できるよう家庭内の環境を改善することや、患者の能力に見合った活動やコミュニケーションを行うことを指導した。また、家族介護者の心配事を特定し、それに対する解決方法やアクションプランの提示もした。看護師は、訪問で健康関連の情報提供(疼痛や水分補給)、脱水徴候の検査(血液、尿検査による)、服薬状況の精査を行い、電話と郵送で結果を報告し、家族はその結果を主治医と共有した。

一方、対照群に対しては、OTや看護師以外の訓練を受けた本研究グループのスタッフが、最大20分間の電話によるコンサルテーションを3回行ったほか、郵送で教育的パンフレットを配布した。

主要評価項目は、4ヵ月後の患者の機能的独立度、QOL、動揺がみられた頻度、活動性および家族のウェルビーイング、介護への自信、有益性認知とした。なお長期評価として9ヵ月後の評価も行われた。

機能的依存度や手段的日常生活動作などで、介入群が有意に良好




スクリーニングを行った284家族のうち試験適格だったのは270家族(95%)で、そのうち237家族(88%)が無作為化された。

試験開始4ヵ月後にデータが得られたのは、209家族(無作為化の88%)であり、9ヵ月後は173家族(73%)だった。

4ヵ月後、機能的依存度についてFIM(機能的自立度評価表)スコアを比較したところ、COPE群の方が対照群に比べ、有意に低かった[補正後平均値格差:0.24、p=0.02、Cohen(効果量を示す指標)d=0.21)。また、手段的日常生活動作に関する依存度もCOPE群が対照群に比べ低かった(同:0.32、p=0.007、Cohen d=0.43)。活動性も、COPE群で対照群に比べ改善した(同:0.12、p=0.03、Cohen d=0.26)。

また、4ヵ月後までに家族介護者が抱える問題が一つ以上解決された割合は、対照群では48家族(44.9%)に対し、COPE群では64家族(62.7%)と有意に高率だった(p=0.01)。家族介護者のウェルビーイング(Perceived Change Indexによる補正後平均値格差:0.22、p=0.002、Cohen d=0.30)や、介護への自信(補正後平均値格差:0.81、p=0.002、Cohen d=0.54)について、COPE群が対照群よりも改善していた。

9ヵ月後の長期評価では患者のアウトカムについて両群で有意差はみられなかったが、家族の有益性認知はより増していた。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)