握力、歩行速度、座位からの起立、立位時間が、地域に住まう高齢者のあらゆる死亡要因の予測因子となり得るとの報告が、イギリス・ロンドン大学のRachel Cooper氏らによるメタ解析の結果、発表された。「そうした身体能力の客観的評価が、死亡リスクの高い高齢者を同定するのに役立つだろう」とまとめている。BMJ誌2010年9月25日号(オンライン版2010年9月9日号)より。
握力、歩行速度、座位からの起立、立位時間と死亡率の関連を調査
Cooper氏らは、公表・未公表を含む試験データを対象に、個人の身体機能(握力、歩行速度、座位からの起立、立位時間)の測定値と地域住民ベースでの死亡率との関連を評価する定量的システマティックレビューを行った。
データ・ソースは、2009年5月までに公表されたEmbase(1980年以降)、Medline(1950年以降)で検索し、未発表結果は研究調査者から入手した。
適格な観察研究とし選択したのは、全年齢層のコミュニティ居住者を対象とし、指定した身体能力測定(握力、歩行速度、座位からの起立、立位バランス)を一つ以上実行しており、死亡率との関連が検討されていたものとされた。
得られた推定効果量は、研究間の不均一性を伴いつつランダム効果メタ解析モデルを用いてプールされた。
身体能力は死亡率の予測因子となり得る
不均一性は検出されたが、身体能力の4項目の計測結果と死亡率との関連には一貫したエビデンスが認められた。すなわち、測定結果があまりよくなかった人ほど、全死因死亡のリスクがより高かった。
たとえば、握力の最も弱い四分位範囲群と最も強い四分位範囲群を比較した場合の、年齢・性・体格補正後の死亡ハザード比は、1.67(95%信頼区間:1.45~1.93)だった(14研究・被験者5万3,476人)。
歩行速度が最も遅い四分位範囲群と最も速い四分位範囲群の同死亡ハザード比は、2.87(2.22~3.72)だった(5研究・被験者1万4,692人)。
なお、歩行速度、座位からの起立、立位時間と死亡率の関連は、平均年齢70歳以上の高齢者でのみ確認された。握力と死亡率の関連についてはより若い集団でも認められた(5研究・平均年齢60歳未満)。