セリアック病は麦類の摂取を契機に発症するグルテンに対する腸管アレルギーであるが、症状が非特異的あるいは無症状のためプライマリ・ケアでは診断が困難である。血中の疾患特異的な抗体を検出するアッセイが開発されているが、高価なためスクリーニングの実施が困難で、ベネフィットも不明確との批判がある。
Ilma R. Korponay-Szabo氏(ハンガリー、デブレツェン大学医療・健康科学センター小児科)らは、セリアック病のスクリーニング法としてプライマリ・ケア看護師が実施可能な組織トランスグルタミナーゼ(tTG)に対するIgA抗体の迅速検査法を開発、そのfeasibilityおよび診断精度を評価する試験を実施した。BMJ誌12月15日号(オンライン版12月6日号)掲載の報告。
地域の6歳児の77%が対象
対象は、ハンガリーのヤース・ナジクン・ソルノク県(Jasz-Nagykun-Szolnok)に居住し、1998年6月1日~1999年5月31日に生まれ2005年に学校に入学する6歳児2,690人であり、この地域の6歳児の77%に相当する。
プライマリ・ケア看護師120人が、6歳児の指先から採取した針刺し血を用いて迅速抗体検査法によるスクリーニングを行った。検査室での筋内膜のIgAおよびIgG抗体、tTGのIgA抗体の検査ために毛細管血も採取した。迅速検査陽性例には小腸の生検が施行された。
特異度が優れ、生検施行までの時間も短い
37例(1.4%)が生検にてセリアック病と確認された。このうちスクリーニング前に臨床的にセリアック病と診断されていたのは5例のみであった。
最終的な生検による診断に対する迅速検査の感度は78.1%、特異度は100%であった。検査室でのIgAおよびIgG検査との比較では、迅速検査の感度は65.1%、特異度は100%であった。
生検施行までの所要時間は、検査室での検査(142日)に比べ、迅速検査(20日)が有意に短かった(p<0.001)。スクリーニングでセリアック病がみつかった患児は他の児童に比べ身長が低く、健康状態も不良であったが、無グルテン食により改善された。
Korponay-Szabo氏は、「本法は簡便、迅速かつ安価な検査法であり、未診断のセリアック病の6歳児のほとんどが、プライマリ・ケア看護師によって検出可能なことが示された。感度の向上には特別な研修を要する」と結論している。また、「医療財源が乏しい地域にも容易に適用可能であり、早期治療により長期的なQOLの改善が得られる可能性がある」と指摘している。
(菅野 守:医学ライター)