急性虚血性脳卒中患者の死亡率は、脳卒中治療センターの指定を受けた病院の方が、一般病院よりわずかではあるが低率であること、また、センターの方が血栓溶解療法の施行頻度が高いことが米国で行われた調査の結果、明らかになった。米国Duke Clinical Research InstituteのYing Xian氏らが、ニューヨーク州で急性虚血性脳卒中の治療を受けた3万人超について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月26日号で発表した。米国では、2000年にBrain Attack Coalition(BAC)が脳卒中治療センターの設置を勧告し、現在ではその数は全米約5,000ヵ所の急性期病院のうち約700ヵ所に上るという。しかし、これまでに脳卒中治療センターの脳卒中患者のアウトカムへの影響についてはほとんど調査がされていなかった。
急性虚血性脳卒中3万人超の30日死亡率を比較
Xian氏らは2005~2006年にかけて、急性虚血性脳卒中を発症し、脳卒中治療センター指定を受けた病院またはそれ以外の病院で治療を受けた、合わせて3万947人について、2007年まで1年間追跡し、その死亡率を比較した。主要アウトカムは、30日死亡率だった。
また同氏らは、消化管出血や急性心筋梗塞で入院した患者、それぞれ3万9,409人と4万24人についても、脳卒中治療センターとそれ以外の病院でのアウトカムを比較した。患者の医療機関への選択バイアスや交絡因子については、自宅から脳卒中治療センターへの距離といずれかの病院への距離の差を操作変数として用いて補正を行った。
脳卒中治療センターの30日死亡率、一般病院より2.5%ポイント低率
被験者のうち、脳卒中治療センターで治療を受けた人は、49.4%にあたる1万5,297人だった。脳卒中治療センターで治療を受けた患者の30日・全死因死亡率は10.1%と、それ以外の病院で治療を受けた患者の同死亡率12.5%より、有意に低率だった(補正後格差:-2.5%、95%信頼区間:-3.6~-1.4、p<0.001)。1日、7日、1年死亡率についても、いずれも脳卒中治療センターで有意に低率だった。
また血栓溶解療法の実施率は、脳卒中治療センターが4.8%と、一般病院の1.7%に比べ有意に高率だった(補正後格差:2.2、同:1.6~2.8、p<0.001)。
両群での死亡率の格差(30日・全死因死亡率)は、消化管出血や急性心筋梗塞では認められなかった。消化管出血についての死亡率はセンター5.0%、一般病院5.8%、補正後格差0.3(95%信頼区間:-0.5~1.0、p=0.50)、急性心筋梗塞は、10.5%対12.7%、補正後格差0.1(同:-0.9~1.1、p=0.83)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)