消費者が直接購入できる、疾患リスクを評価する市販の全ゲノムプロファイリングをめぐって、米国Scripps Translational Science InstituteのCinnamon S. Bloss氏らが、購入使用者の心理面、行動面および臨床面に与える影響を調査した。市販全ゲノムプロファイリングの使用については論争の的となっており、消費者にもたらす影響はほとんど明らかになっていない。NEJM誌2011年2月10日号(オンライン版2011年1月12日号)掲載より。
医療・技術関連会社勤務者対象にベースラインと追跡調査後の心理面などの変化を調査
Bloss氏らは、Navigenics Health Compass(臨床上の妥当性、有用性は不明なNavigenics社が市販する検査ツールの一つ)を購入使用した人を対象に、リスクを精査した結果が、心理面、行動面ならびに臨床面に与える影響を調べた。
被験者は、Health Compassを割引価格で購入した医療・技術関連会社の関係者を対象とした。検査後平均(±SD)5.6±2.4ヵ月後に、ベースラインと比較して、不安症状、脂肪摂取量、運動行動で変化したあらゆる点について報告してもらうこととし、また検査に起因するストレスや、検診の受診状況についても報告してもらった。
登録された被験者3,639人のコホートのうち、追跡調査を完了したのは2,037人だった。
主要解析の結果、ベースラインと追跡調査後で、不安症状(P=0.80)、脂肪摂取量(P=0.89)、運動行動(P=0.61)の変化に関して有意差は認められなかったが、副次解析において、検査に起因するストレスが、評価をしたすべての疾患の平均推定生涯リスクと相関していたことが判明した(β=0.117、P<0.001)。ただし、検査に起因するストレスの増加を示すスコアは、追跡調査を完了した被験者の90.3%で認められていなかった。
一般集団に与える影響は未知数
全ゲノムプロファイリングの使用に伴って、検診受診率が有意に増加することはなかったが、これについてBloss氏は、「そもそも症状のない人が受診するのが適当とはみなされない検診が大半である」と述べている。
そして「市販の全ゲノム検査を受け、後に追跡調査を完了した特定被験者集団においては、そのような検査が、心理的健康、食事や運動行動、検診受診にもたらす測定可能な短期的変化は認められなかった」と結論しているが、最後に「この種の遺伝子検査が一般集団に与える影響の可能性についてはわからない」とまとめている。
(朝田哲明:医療ライター)